男は記憶の片隅に伝説の魔術師の名を想起していた。
「まさか、四大魔術師の一人、炎神のフラムでは!?」
「そんな大層なものじゃあるまいて」
「――ッ!」
杖を落とし跪く男。
四大魔術師は魔術を極めた者たちの中で最も最強とされ、
数々の神獣を治めてまわったとされる伝説の偉人だった。
「ま、まさか三百年前の大老師様がこのようなところにおられるとは
……並々ならぬご無礼をお許しください」
その気になれば男など一瞬で灰燼と帰していただろうに違いない。
ガーディアンとして積んだ四、五十年のキャリアなど、
目の前の英雄豪傑には蟻のごとく矮小に違いなかった。
――がさがさ。
暗がりからさらに姿をあらわしたのは男の仲間だった。
ラプターのような爬虫類系の使い魔に鎧を着せて、のさのさと姿を現す。
「隊長。先ほど東・警備隊監視局から通達がありました。
この辺に鳥類型の使い魔を用いた不法侵入者有りとのこと、
ジャポル協和法に基づき拘引せよとのことです。
――? どうかしましたか」
仲間が老人に気づいた。