「イスムナのコロシアムと言えば、賭博のメッカではありませんか。
生き死にを見せ物に賭博をして上流階級たちが愉しむという……、
よもや――その少女の使い魔は神獣か何かを模したものなんですか?」
「いいや、ただの人間じゃ」
「は――では、その少女は生活に困っていたと?」
「それも違うのう。彼女は曲がりなりにも貴族じゃ」
男はたまらず素っ頓狂な声を上げる。
「ワシは見たことがないんじゃが、
彼女が召喚を行ったときその使い魔は人間の子供であったという話しじゃ」
男は耳を疑いながらも同時にフラムが嘘を言っているようにも思えず狼狽した。
「バカな……召喚で人など――
それよりも人間がイスムナで生きていられるものなのですか」
「不思議じゃろう? 僥倖か奇跡としか言えん」
そこでふと気づいた。
変わった使い魔が特定のメイジを持たず、
フリーでいるという噂が流行っていたこと。
「その使い魔は何年前からそこに?」
「資料では四年前から行方がわからなくなっておった。
ただ、どういうわけかあのイスムナの国王が自ら彼女の使い魔であることを調べ上げ、
返還すると申してきたのじゃい」
「それはまた不思議な話だ……」