――昼下がり。
ベンチに腰掛けたシーナにユウトはホットハッグと飲み物を持って行く。
「ごめんなさい、休ませて貰って――私、まだ大丈夫よ」
「気にすることじゃない、むしろシーナは少し動きすぎだ」
シーナは長旅の後にあれだけ動きまわったというのに平気な素振りをしたいようだった。
「でも、お店に入れてもらえないなんて予想外でした」
「ここは貴族や上流階級が相手の商売ばっかりだから仕方ないよ」
シーナはユウトが座るところを自分の外套で丁寧に払って促した。
「ありがとう」
ユウトはそう言って、
微笑むシーナにホットハッグを渡す。
「これはなんて言う食べ物なんですか?」
両手で受け取ったそれをまじまじと見つめてシーナは言った。
「ホットハッグ。パンに肉や野菜を挟んだ食べ物。
俺の世界にも似たようなのがあったから結構好きなんだ」
「そうなんですか?
でもこのトッピングはあまり美しくない気がします……」
「はは、それは仕方ないよ。
店の親父は『これがうち流だ、文句を言うなら味に言え』っていうくらいだから」
味は確信を持ってうまいといえる。
恐らくこの街で一番うまいだろうとユウトは思っている。
「……おいしい」
「だろ?」
しかし、シーナの一口は小綺麗に小さいので、なかなか要領を得ない。
「こうやって食べるんだ」
「……」
食べ終わった頃にはシーナはユウトを見てきょとんとしていた。
「そんな食べ方はできません」
「そっか、そうだよな……」
「はい」
シーナはちょっと怒ったようになり、
ユウトが空を仰ぐと二人は小さく笑い合った。