「その前に条件は道具を使ってその大男の腕を押し倒せば良いんですよね?」
「そうだよ。もっとも、なまじ半端な威力ではハンマーを使ったところでびくともしないがね」
そういうと男はハンマーを取り出して大男の腕にぶつける。
大男はまるで蚊でも見るかのようにびくともしなかった。
「ユウト、お願い」
「ああ」
ユウトは腰から下げた物の布をほどいていく。
「ん……ちょ――ええ?」
大剣、それも小さなハンマーなど比較にならない重量感と大きさだった。
「そんな大剣、お前みたいなもやしに持てるわけがねえ、
どうせ張りぼてか中身が空洞なんだろう」
「そう思うならこの道具は許可ということですよね」
「む――」
男はしぶしぶといった様子で頷いた。
大男は見た目の恐怖を拭えないのか物怖じしながら席へつく。
「張りぼてとはいえ、腹を当てろよ。刃があったら怪我するからな」
「わかってるよ」
ユウトは笑うのを必死に堪えて木箱を挟んで男の前に立つ。
絶対負ける『わけ』がない。
これはただの大剣ではないのだから。
「いくぞ」
ユウトは振りかぶる。そして一気に薙いだ。
――ぶん。
ばきゃりという音と共に木の土台に大男の腕が跳ねる。
「………………」
静まりかえる周囲。
男は口をあんぐりと開けて突っ立っていた。
「勝負ありですね」