「でも……」
静かな空気の中、ユウトの身体は既に光り出していた。
シーナはユウトを見据えて努めて笑顔を作るしかなかった。
「ご、ごめんなさい。な、何か、買っておけば良かったんですよね、
ほ、ほら、枕とかティーカップとか靴べらとか……」
「なんだよ。靴べらって、俺そんなに靴履くのに手間取った覚えはないぞ」
ユウトも無理に笑って答える。
「いいえ、いつもは私がきちんとお手伝いしていました」
「あれ、そうだっけ」
「はい、それと毎日ちゃんとお布団も干せるんですか?
かび臭い布団で寝てたら怒りますよ」
シーナがまくし立てるように言う。
声も震えて、ただユウトが足下から光に包まれていくのを目で追いながら口だけが動いていた。
「シーナ。これからは、自由に生きることが出来るんだ」
シーナはそこで目尻に溜めたものを伝わせた。
首を横に振る。
シーナを支えるユウトの胸が徐々に消えていく。
「……楽しいこと、やりたいこと、沢山できる。
それは、素晴らしいことだよ」
そうだろ? と息を吐いてシーナの肩を優しく持った。
賢明に首を振るシーナ。
その頭をユウトは優しく包み込むように抱える。
「……」
「……………」
「(――そうですね……私、少し我が儘になれるんですよね――)」
「――――――」
ユウトにシーナは涙のまま頷く。
最後の言葉が、シーナの心に残る。
召還によって消えたユウト。
霧散した星の中に取り残されたシーナは嗚咽を堪えて涙を拭った。
どこにいるかもわからなくなったユウトを想い、
拭っても溢れてくるそれを何度も何度も拭った。