Neetel Inside 文芸新都
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 はあ? なんで、なんで死ななきゃならないのさ。そんなのどう考えたっておかしいよ。
 この国はもっと平和なはずだよ。

 アリスは諦めたように目をつむる。
 手に持った、小さな杖が悠人の前で光った。

『Luqal coded a.registal.eliss.bell Fifth pentalias halii enemyl^ alction』

 朗々と理解不能な言葉を唱え始めた。
 すっと、杖を悠人の視界から落とした。
 そして、ゆっくりと近づいてくる顔。

「な、なに。殺さないで!」
「いいからじっとして。殺すわけないでしょ」

 軽く叱咤するとアリスがさらに顔を近づける。

「ちょ、うぇ――」

 アリスが悠人の首を両手で掴んで寄せた。

「ん……」
 アリスの唇が悠人のそれに重なる。

 儀式って首締めのことだったのか。
 悠人の唇に重なったそれとは別に悠人は冷静だった。

 悠人は身動きも出来ずに、ただ、これが悪い夢であることを願った。
 アリスが固く結んだ唇を離す。

「終わりました。署名します」
「決断が早いね。ミス・レギステル」
「げほっげほっ」

 数秒のことだったのに悠人の首筋にはくっきりとアリスの手の跡がついていた。
 ホワードは微笑むと琥珀色の紙をどこからともなくアリスに差し出した。

「夢でありますように、夢でありますように、夢で――」
 僕は壊れていた。

「っさい!」
 用紙とペンを持ったアリスの脚が飛んでくる。

 そんな中、「やあやあ、アリス」と突然金髪の少年がマントを靡かせて歩いてきた。

       

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