「だめよ、そうじゃない」
私は今、お金よりも大事なものを賭けてここにいるんじゃない。そう、『メイジ生命』。
そうよそれ、とアリスは持ち直す。
どんな形であれ、生きた使い魔を学園に連れ帰れなければアリスは退学になってしまう。
まだ卒業までには後三年間ある。
今はようやくメイジのスタートラインへ立ち、
これからが本格的なメイジの実戦勉強だというのにこんなところで終わるわけにはいかない。
そう決意を新たにして、
アリスはマントを翻し、その髪を舞わせた時だった。
「ユウ……」
後ろからそんな声が聞こえた。
「……?」
振り返る。
アリスとそう歳も離れていないであろう少女が隣の男の子をユウ―なんとかと呼んでいる。
私の使い魔も人並みに成長していればこの目の前の少年くらいだろうかと思案する。
「さ、もう休憩はいいですからもう少し見て回りましょう。ユウト」
――ユウト!
アリスにははっきりとそう聞こえた。
少女がユウトに抱きついて腕を組み去っていく。
あにそれどういうこと? と思うより先にアリスは追いかける。