Neetel Inside 文芸新都
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 確かにユウトと聞こえた。
 でも、その少年は知らない少女と歩いている……。

 人違いかもしれない。使い魔違いだろうか?
 しかし、アリスは声をかけずにられなかった。

「あ、あの――」

 言いかけたところで二の腕をぐいと引かれる。

「いたっ――」

 アリスの腕の先には見知らぬ男がいた。

「な、なによ! 放しなさい」
「お前、メイジだろ。入国許可証を見せてもらおうか」
「は? 何ですかそれ」
「知らないのか? 今年から新たにメイジの入国には許可証が必要になったのだ」

 アリスは怪訝に思った。

 よくよく見てみればこの男、
 ジャポルに一つしか存在しない正規管理官の証明である六芒星バッジすらつけていなかった。

 ジャポル国の勉強なんて社会科の中で一番最初にすることだ。

「あの、何かおかしくないですか……」
「何がおかしいものか、いいから許可証を見せなさい。
 無いなら少し一緒に来て貰うことになるぞ」

 ユウトと謎の少女はとっくに見失ってしまっていたが、
 ここで事を荒立てては返って時間がかかると思い、
 アリスは焦燥に駆られながらも冷静に続けた。

「許可証が必要だというのなら、
 まず自分を名乗ってください。六芒星の団員か何かですか?」

 男は一瞬苦い顔をした後、すぐに仏頂面になり答えた。

「そうだ、ただ正規の団員ではない。
 巡回団員といったところだな。
 それで、入国許可証は持っているのかね」

 そんなものあるはずはないのだが、
 昨日や今日までジャポルに住んでいたわけでもないアリスは勝負を賭けることにした。

「六芒星のバッジ」
「――あ?」

「だから、六芒星のバッジよ。団員なら、持ってるでしょ」


「――ふっ、とりあえず来てもらうぞ、アリス」

 男はもうどうでもいいと言った様子で、知るはずのないアリスの名前を呼んだ。

「――え?」

 杖を構える余裕もなく、がつんという衝撃と共にアリスは男にもたれるように倒れる。

 敵は一人だと思っていたのが災いしたのか、
 薄れ行く意識の中でアリスは男を見上げて墜ちていった。

       

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