「マナなんかもう雛の涙ほどもないでしょうけど、
これは紛れもなくあなたの詠唱よ。アリス」
くすりと笑う女。
アリスはもはや呆然とその光景を眺めていた。
姿を現した体躯はやはり人の形のまま、ユウトであった。
「……ああ、ユウトだわ」
完全にユウトの頭部までが顕現したかしないか、
女は用意していた自分の杖を構えた。
『! 五芒星の神々よ、我(イシス)に使い魔との月引をもたらせ……
(Fifth pentalias halii enemyl^ alction coded isiss…)』
「だめ……」
何をしようとしているのかすぐに解った。
アリスは悔しさやら不甲斐なさやら苦痛が入り組んだ感情で、
目尻に涙を据えて思い切りユウトに向かって叫んだ。
「ユウト! 逃げて!」
ユウトは女が杖を振り下ろすと同時に左方へ転がりこんだ。
「――、遅い!」
女はユウトの動きを予期していたのか、
杖は肩の高さで留まっていた。
壁によってユウトの動きがわずかに止まった。
そこへ向かって今度こそ杖を振り下ろす。
『(契約)Luqal!!!』