Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      


「マナなんかもう雛の涙ほどもないでしょうけど、
 これは紛れもなくあなたの詠唱よ。アリス」

 くすりと笑う女。
 アリスはもはや呆然とその光景を眺めていた。

 姿を現した体躯はやはり人の形のまま、ユウトであった。

「……ああ、ユウトだわ」


 完全にユウトの頭部までが顕現したかしないか、
 女は用意していた自分の杖を構えた。

『! 五芒星の神々よ、我(イシス)に使い魔との月引をもたらせ……
(Fifth pentalias halii enemyl^ alction coded isiss…)』

「だめ……」

 何をしようとしているのかすぐに解った。
 アリスは悔しさやら不甲斐なさやら苦痛が入り組んだ感情で、
 目尻に涙を据えて思い切りユウトに向かって叫んだ。


「ユウト! 逃げて!」

 ユウトは女が杖を振り下ろすと同時に左方へ転がりこんだ。

「――、遅い!」

 女はユウトの動きを予期していたのか、
 杖は肩の高さで留まっていた。

 壁によってユウトの動きがわずかに止まった。
 そこへ向かって今度こそ杖を振り下ろす。

『(契約)Luqal!!!』

       

表紙
Tweet

Neetsha