ユウトは跳躍に似た格好で地面を蹴った。
その勢いたるや、獣の使い魔のそれと思えるほどの速さだった。
あっという間に出口が見える。
そこには見張りをしていると思われる男二人の後姿があった。
頭部が無様にもさらけ出されていているのを瞬時に見て、
ユウトは手刀と回し蹴りで意識を一息に刈り取る。
「はっ――」
刹那の間に放たれた進撃。
ユウトの勢いとの相乗効果によって命を奪ってしまいかねない威力となって男たちを襲う。
「がぅ……」「ぐふ……」
二人は二の句を継ぐことも出来ずに倒れる。
ユウトは男たちが地面につくより早く、
アリスを担いだまま上方へと跳躍した。
何の補助魔法もなしに数メイルはある建物の天井へ昇りきる。
それが出来たのはユウトがこの世界の人間ではないからかもしれない。
「ちょっと、やばかったな」
ユウトの声でアリスの思考もようやく正常に戻った。
アリスは夜空に輝く星の下で、
ユウトの首にまわしていた腕を放す。
すとんと滑り降りる音が聞こえ、華奢な体躯を追って、
エクルー色の髪がはらはらと風になびく。