Neetel Inside 文芸新都
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「あ、あんたのルーン……その、何ともないの?」
「何ともないわけない、早く書き直してくれ」

 女が使ったコントラクトは間接的な契約に過ぎず、
 アリスが使った直接的なコントラクトを上回っての契約にはならなかったようだった。

 ただ、ユウトの体内に流れるあの女のマナの奔流を気持ち悪く感じる。

「すぐ始めるわ」

 ユウトが頷くと、アリスは杖もなしに詠唱を始める。

 建物の一角からあの女の姿が追ってくる。

「見つけた、逃がさない。『(抗力!)Antil!』」

 女が振りかざした杖は紫色の光線を放ち、それはユウトの手の甲に吸い込まれた。

「う……急いでくれ、
 あいつおしみ気もなく俺に制圧魔法使ってきやがった」

 アリスにとっての唯一の不安は杖のないままコントラクトし、
 あの女の上書きができるかどうかであった。

 立っているだけでやっとの状態なのに毒づく余裕もなく詠唱を続ける。

 ユウトの手の甲のルーン、
 女のスペルによって編み上げられた抑圧の魔法が、
 徐々に楔のような形を伴ってユウトの身体を縛り上げ始める。

『(契約)Luqal!!!』

 そこで詠唱は完成したのか、
 アリスは回復した分のありったけのマナをユウトの甲へ、
 手から直接押し込むように流した。

 電流が流れるようなマナの衝突、
 女のルーンはいくらかの抵抗を見せた後、アリスのルーンに上書きされ消え去っていく。

       

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