Neetel Inside 文芸新都
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 口をあんぐりとあけて、悠人はその様子を見つめた。
 と、飛んだ? 宙に浮いた?

 ありえない。

 他の子達も皆ちりぢりに飛んでいく。
 ワイヤーや糸のような物はどこにも見あたらなかった。風もない。

 浮かんだ者達は各々の方向に去っていった。
 残されたのは、ホワードというおじさんと悠人だけだった。

 ホワードは二人きりになると、溜め息をついた。

「本当に可哀想なことだが、あの娘は容赦も愛着も知らないからな……」

 中年の黒マントは悠人を哀れむような目で見つめた後、そっと杖を振り上げた。
 悠人はそのおじさんの唱える声がまるで子守歌のように聞こえてきて、深い眠りに落ちていった――。

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 生浦悠人。小学二年生の八歳。地球人である。
 運動神経、頭脳、容姿はいたって普通。人間関係は幼なじみが一人。
 
 それ以外の交友はほとんどナシ。
 オタク予備軍であったかもしれない。

 親にも先生にも
『死ぬ気でやれば本当によく出来る子なのにめんどくさがりで結果的に何も出来ない子』
 という総評であった。

 穏和で、割となんでも受け入れる方だが、納得のいかないことにやや反抗的。
 無駄に正義感も強いとか……。

 しかし、そんな悠人も二十分前まではきちんと地球の上にいた。


 ところが現実とは無情なもので、
 この世界に来た原因が何であろうと、来てしまったのは過去であるから、
 その結果を今更免れることは出来ず……、

 つまりは、『悠人は帰れない』そういうことなのである。


 ――そして月日は次のページで【五年】の歳月を経る。


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