Neetel Inside 文芸新都
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 ユウトとアリス、スーシィの三人は空の上にいる。
 ドラゴンで空を飛んでいるのだ。

 ドラゴンの飛行速度に通常は掴まっていられないが、
 レビテーションとフライの応用でほとんどの風抵抗をゼロに出来るとスーシィが魔法を施した。

「そうそう、これでいいのよ」
 アリスは快適な高速移動の旅路に歓喜していた。

「さっきまでとは違って随分ご機嫌なのね」
「あら、悪い?」

「いいえ、ただ随分前向きだと思って」

 いくらスーシィが手足を治すとはいえ、
 それは確信のない話しだというのにアリスはどこか抜けているように見えた。

「手足の話し、本当に信じてるの?」

 スーシィは意識だけアリスに向けて言った。

「あのね、手足がどうなったってこの世は魔法さえあれば大抵のことは出来るのよ」

「……本当にそう信じているのなら凄いわ」
「フン、今更私のご機嫌をとっても無駄よ」


 その間、ユウトは我関せずと言わんばかりに黙っていた。
 高所恐怖症……とまではいかないが、ユウトは高いところが限りなく苦手だった。
 そして、第二に速い乗り物も苦手なのだ。

「ユウト、どうしたの? 真っ青よ」
「いや、なんだもないよ」
「なんでも、でしょ? もしかして、怖がってるの?」

 アリスの窮地を颯爽と救ったユウトが、
 よもやこんなところで臆するなど、アリスはなんだか妙な気持ちになった。

「ユウトは一度、魔龍戦争でフリーメイジと一緒に戦ったことがあって、そこで空から落ちてたわね。
 それ以来こういう背中にまたがるのが嫌になったんじゃないかしら」

「な、なんでそんなこと知ってるんだ」
 ユウトはスーシィの後ろ髪に何か記憶を辿るヒントを見つけようとしたが、思い当たる節がなかった。

「あまり教えたくないから言わない」

 三人のフライトはこうして三時間に渡った。


       

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