「ときにアリス。お主とスーシィとはどういう間柄かの」
「はい、道中で偶然親戚の――」
「親戚の?」
「(――親戚の子供)」
ユウトが呟く。
「し、親戚の子供で、魔法の知識が豊富なので連れてきました」
「ふむ、両親は了解しておるのかね」
スーシィは事も無げに一歩前へ踏み出す。
「はい、しかし、証明する書面のものはありません。
ですから代わりにこれをお渡しするようにと言われて来ました」
そう言うとスーシィはフラムが座る机の上にゴールド紙幣を積み上げていく。
「ほっほっほ、随分と変わった出自じゃのう。
有り難いことだが構わん。素質さえあれば、金は受け取らぬ。好きなだけいると良い」
「本当ですか、ありがとうございます」
そう言ってスーシィは涙目になりながらフラムに抱きついた。
「なあ、アリス……」
「今更気づいたのね。あの涙はただの水(ウォータスペル)よ」
かくしてあっという間に編入が決まったスーシィは適正を見るため別の先生へ案内され、アリスとユウトが残った。
「さて、残るは汝らだが……」
「その前に学園長」
アリスは事の次第を告げようと口を開く。
「お主の言いたいことはわかっておる。しかし、その答えは否じゃ」
「え?」
「主の志が折れぬまでは学園へいても良いが、規則は曲げぬよ」
「そ、そんな……では、学園内での魔法は――」
「今まで通りじゃ、授業と研究時間のみは禁止じゃ」
「そんな……」
アリスは掠れた声で言った。
「ほっほ、そう落ち込むではない。
人の助けがあっての生活じゃ。そして、進級おめでとう」
フラムから手渡された新しい制服をなぜかユウトが受け取った。