Neetel Inside ニートノベル
表紙

或る夏の物語
9週目

見開き   最大化      

●9週目



10月に入った。
相変わらず気温はあまり下がらない。

しかし僕はウキウキしていた。
くみと分かり合える。
そんな気で居たからだ。

けど、くみは今週忙しいらしく、あまりチャットに顔を出さなかった。
自然と、さんたやどらみと話す機会が多くなる。


突然、さんたが
「どうした? 好きな人でも出来たか」
と聞いてきた。

なぜそんな事を聞くのだと思ったが、
どうやら自分で思う以上に浮かれていた様だ。
僕は笑顔を押しつぶしながら「まあね」と答えた。


どらみ「そうなの? ねえねえ、それって誰?」
ぼく 「ひみつ(笑)」
どらみ「えー、感じ悪いなあ(笑)
    さんたは何か知ってる?」
さんた「ひみつ(笑)」
どらみ「二人とも教えてくれたっていいじゃない」
さんた「それじゃあ、どらみは好きな人いるの?」
どらみ「いるよ」
さんた「誰?」
どらみ「ひみつ(笑)」


どらみが僕の事を好きだと思うのは、自意識過剰だろうか。
さんた「なんだ、俺がいくらアタックしてもダメな訳だ(笑)」
その事をさんたが知る好もなく、笑い話にしようとしてたけど、
今の僕には笑い飛ばすことはできなかった。


何だか、ややこしい事になりそうな予感がした……。



 ---



久々にくみが来たとき、さんたがオフの話をしてきた。

さんた「今度の連休に鍋でもやらないか」
ぼく 「いきなりだな、どこでやるつもりなんだ?」
さんた「くみの家が中間当たりで良いんじゃない」
くみ 「え、私のトコ?」
さんた「うん。4人ぐらいで集まってさ、面白そうじゃない」
ぼく 「4人って、どらみも誘うのか? 遠いのに」
さんた「前に言ってた友達が居たでしょ」
ぼく 「友達って?」
くみ 「ああ、私にチャットを教えてくれた人。
    でも今からじゃ予定たたないなあ」
さんた「考えておいてよ」
くみ 「あはは、わかったー。そうしとく」


いつの間に、さんたとくみはそんな話をしていたんだろう……。
僕の知らない所で何かが動いている。
そんな気がしてならなかった。



 ---



土曜日深夜、珍しくくみのメッセが繋がった。
いつもなら寝ている時間なのに……。

現に、さっきまでメッセは繋がっていなかったはずだ。
少し気になったが、いつものように気軽に話しかけてみた。


ぼく「こんばんは~。どうしたのこんな深夜に」
くみ「こんばんは。ちょっと眠れなくて……」
ぼく「何か悩み事? 話なら聞くよ」
くみ「ううん。なんでもない、気にしないで」
ぼく「そう、ならいいんだけど。こんな時間に来るのは珍しかったから」
くみ「ごめんね、気遣わせちゃって」
ぼく「いいよいいよ」
くみ「……さんたとか、みんなもう寝ちゃってるよね……」
ぼく「さんた……? さっきまで居たけどもう寝たみたいだよ
   どらみも、いつも早いからね」
くみ「そう……。じゃあ私も寝るね」
ぼく「あ、うん。おやすみ」
くみ「おやすみなさい」


……なんだったんだろう?
不安が頭をよぎる。



 ---

       

表紙
Tweet

Neetsha