Neetel Inside ニートノベル
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或る夏の物語
2週目

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●2週目


「さんたマンションの部屋」は順調な滑り出しだった。
折りしも8月中旬、世間は夏休み、そして僕たち社会人はお盆休み期間中である。
チャットは大盛況で、僕たちの部屋にも新人が増えた。

僕は盆休みの間、ずっと出かける事もなく「さんたマンション」に入り浸っていた。
他の3人も似たようなもので、楽しいチャットの時間は夜まで続いた。


こうして僕たちは、みるみるうちに親密度を上げていった。



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お盆が終わっても、休みの感覚が抜け切れず、仕事中に「さんたマンション」にログインする。
意外にも他のメンバーがちらほら居た。


新メンバーには夏休み中の学生も居るのでおかしくは無いが、初期メンバー……さんた・くみ・どらみは社会人である。
当然、仕事をしている時間帯なのだが……

ぼく「お前ら仕事しろよ」

自分の事を棚に上げて言ってみたものの、説得力は無い。


皆考えることは一緒のようで、それぞれ仕事に暇を見つけてはチャットに繋いでいた。
もちろん急な仕事や忙しい時は会話が止まったり、いつの間にか退出してたなんて事もあるが、お互いが合う時間を使ってまったりとチャットを楽しんでいた。



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この頃になると、各メンバーのパーソナルデータも大体把握できた。


ぼくは滋賀県在住の24歳、会社員。みんなにはそんな風に自己紹介をした。

さんたはリーダー的役割で、ぼくより1つ年上の25歳。
関東近辺に住み、製造業の会社に働いているそうだ。

くみはぼくと同い年、名古屋辺りで秘書をやっているらしい。

どらみは・・・なんと九州在住。
1才下の23歳である。


新メンバーには関西圏や北海道など、日本全国にメンバーが散らばっていた。
離れた場所に居ても簡単に会話が楽しめる。チャットの醍醐味である。


新メンバーは若く大学生が多かったが、僕を含め初期メンバーの4人は年が近く、くみは地理的にも近い場所に住んでいた。

「くみの街へは車で行ける距離だな……」
僕はそんな事を考えていた。


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