Neetel Inside 文芸新都
表紙

魔女ルーの旅路
指名手配

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燃え上がる山村
虐殺される人々
逃げ遅れた娘
馬を駆る騎士に矢を射られ
細い身を掠める
転倒した娘
白刃を振りかぶる
泣き叫ぶ娘
振り下ろされた刃
深く突き刺さった剣は確実に少女の命を奪うだろう
途端燃える男
燃えた先には黒ずくめのモノがいた
助けてと懇願する娘
「いきたいか?」
もはや声は出ずひゅうひゅぅという音のみ
しかし伝わったのかそれは言った
「ならば助け様。それがお前の選択ならば」
「代償はお前の死だ」

     

チチチチチチチチチチチ
小鳥のさえずりで私は目がさめた。
窓の外にある景色は素晴らしい。
青い空と白い雲。
青い海と白い砂浜。
青と白で統一されているかのような景色。
だとすれば私はこの世界の異端者だろう。
悪魔との契約の印である紅い目なのだから。
さて、この景色はとても好きだったがもうここにも長居は出来ない。
新しい場所へと向わなければばれてしまう。
魔女と言うのはいつの時代も忌み嫌われるものだ。
普段は魔法で目の色を変えているがばれない可能性など無い。
早め早めに移動はすべきだろう。

     

「ふぅ」
仕度を整え町を歩いている私は噴水のある綺麗な広場で一休みしていた。
空を仰ぎながら二度目の溜息をつく。
この町はとてもは綺麗だ。私のような存在を忘れさせてくれるほど。
小さい子供たちが鬼ごっこをして遊んでいる。微笑ましい光景だ。
ベンチで一休みしているおじいさんも、幸せそうな男女も。
全てこの景色になっている。
私ものこの景色の一部になれるだろうか。
私は魔女だし忌み嫌われる存在なのだからそんなことが叶うはず無い。
けれど、それでもやはり私は人々に囲まれて生きていたい。
そろそろ次の町へ行こう。
目標は次の次の次のずっーと先にある街。
道のりは遠い。
速め速めの行動が大事だ。
私は魔女。魔女ルー。


     

人気の無い山道にまで来たところで魔法を解き、目の色を赤に戻した。
一応フードをかぶっておこう。
まぁ……一般人にしか役に立たないんだけど。
しばらく歩いていると背中にどんっとぶつかる感覚があった。
全く無防備だったので私は転んでしまった。
鼻を打ってしまった。いたい。
とっってもいたい。鼻血が出てないのが不思議だ。
「いたたた」
「だ、大丈夫ですか!?」
声と一緒に手を差し伸べられる。
見上げると私と同い年(18)位の青年が居た。
漆黒の髪と澄み切ったという表現は変かもしれないけど真っ黒な瞳。
私がまわっていた国では絶対見なかった色だった。
かっこよくて見惚れちゃったのは内緒だ。
「す、すいません。ちょと急いでいたもので……」
「い、いえ。大丈夫です」
そういって、一応手を取って起きあがる。
「ええーと。実は俺道に迷ってまして。それで適当に町に出れないかなーとか歩いてたら変なのに追われてるんです」
「変なのですか?」
変なのってなんだろう。
どっちかっていうと貴方の方がへんなのだけど。
「なんかこう、槍持ってて通行証がどうのこうのとかいってる人たちなんですよ」

     

「そ、それって役人ですよ」
ややややばい。関わるんじゃなかった。
私までつかまってしまうこれは。魔女裁判にかけられる。
「ああっ! 私急用を思い出したので。それでは」
「いたぞー! あそこだ!」
ば、はれた!
ちょとまって。
まってまってまって。
私は関係ないはず。
「き、きましたねぇ、どうしたらいいんですか?」
「話し掛けないで! やめてえ!」
逃げようとする私の袖を掴まれてしまった。
そのさいローブが外れてしまった。
「あっローブが……!」
「ま、魔女だ! 捕まえろ!」
も、もう終りだ。
魔女裁判にかけられる。
その際ににあんなことやこんなことそんなことまでされてしまう。
「えっと。なんで目が紅いんですか?」
「そ、それは魔女だからよ!」
「まじょ? まぁいいです。あの人たちどうすればいいんでしょうか?」
「……逃げるしかないでしょ」
畜生。
「逃げてるときにあの人たち大体三人くらい斬っちゃったんですけど正当防衛ですよね?」
なりません。
「まぁいいや。一人斬っちゃえば何人斬ろうが一緒ですかね? ですよね。じゃあ殺してきますんで」
「ちょ、ちょと!」
ずかずかと役人の人たちが居る方へ向う青年。
変なのに関わっちゃたと心中のた打ち回る脳内後悔で埋め尽くされる私。
大体十人は居るのに一人じゃ勝てないでしょ。
「うわぁああ!」
あっという間に三人ほど斬り伏せている。
つ、強い! この人は……もしかしたら………!

     

「無理でした! 助けてください!」
そう叫びながらこちら側に走ってくる。
「何よ! 強いと思ったら駄目だったとか! 男なら頑張りなさい!」
「いや、思いのほか辛かったんだ! マジで!」
何時の間にか敬語じゃないけどそんなのどうでもいい!
「くそっ! やってやるわよ! 生きたいもの私!」
逃げるのをやめて立ち止まる。
男たち(役人)は荒い息をしながら近寄ってくる。
まるで今に私を襲おうとしてるみたい!(疲れて息が上がってるだけ)
「燃え尽きろぉおおお!」
立った一言。(?)
これだけで役人たちは消しかすも残さず消滅した。
しかし周りに火は無い。ただ、そこにいた人間だけが燃えた。
「なんて力だ……これがまじょか」
魔力を消費したのでへたり込む。
ふと目の隅に生き残ったと思われる一人が逃げていくのが見えた。
追いかけたいけど魔力を使ったので立ち上がれない。
目で追おうとしたが既に影すら見えなかった。
「ああ! やっちゃた……指名手配される!」
こうして、魔女ルーの奇妙な旅は始る。

       

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