Neetel Inside 文芸新都
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病院の外に出ると、二人は病院正面入り口に回り込み、そこにいくつか並ぶ木々のふもとにあるベンチに、腰をおろした。
大三和の勤務する交番は、ここから100Mそこらの位置にある。無論だが、目視可能だ。
「さて、と何から話そうかな」
気まずさにたまりかねてかはしらん、しかし最初に口を開いたのは御一条であった。大三和は、隣に腰を下ろす彼女に視線を投げかけるだけだった。
「口寄せって知ってる?」
唐突な質問に、大三和は、多少口ごもりはしたが、「ああ」と返事をすることはできた。
「そう。私がさっきしたのはそれ。で、あの子のやり残したことっていうのは、母親の死を見届けること。だからもう戻ってこないでしょうね」
こともなげに言ってのける御一条であったが、大三和はその言に、彼女が思っているよりもはるかに上回る安堵感を得ていた。
しばらくの沈黙ののち、大三和は、思い出したように口を開く。
「じゃ、じゃぁ、何かと、御迷惑をおかけしましたが、僕はこれで失礼しようかと」
言い終え、立ち上がろうとする大三和の腕を、御一条はとっさに掴んだ。
「私がここにくる前に言ったこと忘れたの?」
大三和の顔は、帽子の作る影と、夜闇に隠されていて表情は読み取りにくくはあったが、そこに困惑が表れているということだけは判った。
「犯人探し、手伝いなさい」
「犯人探し?」
あまりに、にわかなことであったので、オウム返しをするほか、大三和になすすべはなかった。
「あんたホントに人の話きかないのね。言ったでしょ、この世の中に、あるのは、『生』と『霊』と、『神』だけで、それぞれは実体と、半実体と、霊体を持っていて、半実体を形成するには何らかの特別な力を持った『誰か』が協力している可能性があるって。ホントはあの少年だってあんな姿にはなってないはずなの。そこになんらかの他意が働いたことは間違いないから、それをやったやつを見つけるの!判った!?」
後半の語気は完全に荒立っており、傍目から見れば、痴情のもつれにしか見られていなかったであろう。
御一条は、返事も聞かずに、「じゃぁまた明日いくから」、とだけ残し、その場をあとにしてしまった。

       

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