Neetel Inside 文芸新都
表紙

yamiako
藪の中の蛇睨み

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 勢いよく扉を開けた、先には粘るような暗闇。この湿気た空気を出しているのは男が何度もヒクつかせている鼻か、それともそれが感じ取っている女の匂い、その膣口から発するツンとするようなフェロモンのせいか、汚濁した空間を男は女の手を引いては颯爽と潜り抜けた。
 男はバスルームに女を放るように押し入れると続け様にスカートをたくしあげた。ストッキングをずらすと、男はシャワーヘッドを掴み、まだ湯にならない冷水をそのまま尻臀に向けて流す。男はその異臭の元を探るようにバスタブにもたれかけさせた女の股に後ろから手を突っ込んだ。その時に闇がすっと晴れたかと思うともう一度、前よりもキツいぬるりとした感触が、それは男の手に表れて、そして次に鼻孔に鉄の匂いを乗せて、そして最後はその鮮烈を覆い隠すような赤色として、シャワーの流れをしても薄まりきらないようなそれを男は口をつけて舐めた。
 その流れは男の眼を一瞬で充血させた。またその下腹部を膨らませて、猛った両脚は濡れて重くなったはずのズボンを軽く飛ばしたかと思うと勢いよく女の尻を捉えた。尻をつかんだ親指は薄まった血を腰骨あたりに塗りたくった。芋虫のように動く人差し指は赤黒い塊を男の口へ持って行き唇を赤く染める。すべての部分がバラバラに一つの欲望から発散する。赤色は全ての色彩感覚を奪って白黒の世界を演出するのだった。
 投げ出されたシャワーヘッドは蛇のようにうねりながら、固まりかけた経血を洗い流し、同じくなにもかもがうねりだしている男の脳みそが這い出してきたようなペニスがすべてを還元しているようであるが、実際にはすべては還元されるのだ。無為の流れ、何かを生み出すであろうはずの鮮血の流れはいくつかの濃い筋と水によって薄くなったところを作り出し、それに混ざるか混ざらないかのところを男の精液がぬるぬると隠れる場所を求めて、しかし隠れるところなど無いのだ。実に単純なことであるが、何かを隠蔽することなど不可能である。ただそこにあるのは無であり、人々はたとえ子宮を裏返してみたところで何も得るものがないのだ。果てしない往復、すべての痙攣運動はもはや粘り気の失せた泡沫上の液体、精子と血の溶け合ったピンクのそれを残すのみだった、これもシャワーによってあっけなく流された。何かを生み出そうとするものはこのように排泄され、そしてまた流れることによって戻ってくるのだろう。男はへばりついた自分の精液を眺めていたが、まだもがくように暴れていたシャワーヘッドを掴み上げてこれを強引に排水溝へと吸い出させた。

       

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