Neetel Inside 文芸新都
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蚊帳の外

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明朝この辺りを台風が通過するらしい。確かに雨脚は徐々に強まってきている。
私は大学の校舎から外に出ると、懐から煙草を出し、火をつけた。
疲労した頭に煙草の煙が染みわたっていく。
風が吹き始め、木をさらさらと揺らしている。煙もまたさらわれていく。
すでに日は落ち、薄暗い。


煙草は、悪魔がどこからか持つてきたのださうである。


こう言ったのは芥川だったか。近頃めっきりと煙草を吸う本数が増えてしまった。
少しは本数を控えねば……

ふと足元を見ると蛙がいた。この辺では滅多にお目にかかれないほどの大きさである。
日が昇っていればかなりの人目をひいたであろうが、今のような時間まして大雨が降るやも知れないこんな日では誰も気がつかないだろう。
このような日だからこそ、わざわざ人が行き交うアスファルトの上へと這い出してきたのか。

蛙はぴくりとも動かず、ただじっとしているばかりであった。
私は煙草の箱の角を押し当ててみた。
しかしやはり動じない。


自ら苦難を招きかねない場所に現れ、そして更に雨風に耐える……



蛙の姿と私の姿を重ねざるを得なかった。



       

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