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自説自論
『ジオン正義論』は正しいのか

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 機動戦士ガンダム、それは日本アニメ界の栄光である。
 これまでのロボットアニメとは異なった人間同士の戦争、兵器として量産運用されるロボット(モビルスーツ)などが人々の心を引きつけ、作品自体は打ち切りとなったものの、その後の再放送で人気が爆発し、映画版や続編が作られるまでに至った。
 筆者も、かつてはファンであった(今ではファン同士の醜い争いに耐えかねて遠ざかっているが)。
 ガンダムの中で印象深いものといえば、12話や42話で描かれたギレン・ザビの演説であろう。総帥が自国民に対して自国の正義を訴えるこのシーンは、それまでのアニメでは考えられなかったことらしい(『宇宙戦艦ヤマト』のデスラーも一応演説はしているが)。主人公側が絶対的な正義で、敵が絶対的な悪であるという構図がこれで崩壊した。いまや、ただ単純な勧善懲悪モノのロボットアニメはほとんど存在しないといっていい。ガンダムは「こちらに正義があるように、敵にも信ずる『正義』がある」ということを描いたアニメだったのだ。
 だが、近年様子が変わってきたように思える。というのも、最近では「ジオンこそが正義であり、連邦は悪である」という人々が出てきたのだ。実際、そういう人々がガンダムを作っているサンライズの中にもいて、その思想を具現化した作品(0083やMS IGLOOなど)が出てきている。
 しかし、これはおかしくないか? ガンダムにおける理念は「どちらにも正義がある」というもので、「連邦=悪」「ジオン=正義」などとするのはその理念に反するのではないか? そもそも、何をもって「ジオン=正義」などといえるのであろうか?
 今回はジオンの正当性について主に第一作目(所謂ファースト・ガンダム)やそのリメイクであるジ・オリジンを元に考えたいと思う。

 筆者の主観で言えば、ジオンが正義だとする主義者達、所謂「ジオニスト」は次のように主張している傾向がある。
 ・連邦はスペースノイドを迫害しており、ジオンはその圧政に抵抗するために立ち上がった。
 ・一年戦争は独立戦争だったのだ。
 まず1つ目の主張から見てみたいと思う。
 第一作目の描写では、スペースノイドがアースノイドに極端に差別されているというような描写はされていない。むしろスペースノイドがアースノイドに対し被差別意識を持っているだけに見える(第13話でのカイ・シデンの「地球に家があるだけでエリート」という発言などより)。
 ジ・オリジンではどうか? 確かに、ジオン・ズム・ダイクン死亡時に発生した暴動に対し連邦軍は戦車やガンタンクを動員して大規模な鎮圧行動を行なっている。実弾を使って暴徒をなぎ払っており、とても民主主義国家でやることとは思えない。だが、それ以外の描写は存在しなかったと思う。それどころか、連邦はシャア率いる部隊が連邦軍基地を襲撃したら、そそくさと全部隊を撤退させてしまった。これはおかしいのではないか? 圧政を敷いているのであれば、逆に大規模な増派をするといった行動をとるはずであろう。軍隊を撤収させるというのは事実上の放任である。圧政とは言いがたい。
 一年戦争が『独立戦争』だったか。これも疑わしい。
 第一作において、ジオン公国すなわちサイド3では戦闘は発生していないのだ。劇中描写でもコロニーの殆どは無傷であるし、設定においても戦争はジオン側のサイド1・2・4への先制攻撃から始まっている。独立戦争なのに自国での戦闘が発生してないというのはおかしくないか? アメリカ独立戦争をはじめとする世界各国の独立戦争は全て自国から始まっている。
 ジ・オリジンの場合ジオン側の大義がより疑わしくなる。前述したとおり軍隊は全面的に撤退しており、開戦前にはもうすでに連邦の権限が全く及ばない状態になっているのだ。開戦前にもうジオンは独立していた。なのに、どうしたらこの戦争を「独立戦争」などといえるのか。
 更に、開戦後のジオン軍の行動がますますおかしい。同胞のスペースノイドであるサイド1・2・4を攻撃したのだ。それも、駐留する連邦艦隊を攻撃するにとどまらず、毒ガスや核を使って中の住民ごと皆殺しにした。「スペースノイドの解放」を謳っておきながら、一番最初にスペースノイドを殺したのだ。「連邦に味方するスペースノイドはスペースノイドではない」とでも言うのだろうか。
 ルウム戦役や南極条約締結後の行動も変だ。地球に侵攻したのである。いくらレビル将軍が徹底抗戦を主張したからといって、地上に侵攻する必要があるか? それよりもルナツーを占拠して制宙権を支配することのほうが重要だと筆者は思う。制宙権さえ確保出来れば、連邦はジオン本国への攻撃が不可能になり、この時点で「独立」は達成されるのだ。にも関わらず、地球侵攻を行った。
 この時点で、ジオンの戦争目的がはっきりと見えてくる。すなわち、一年戦争は「独立戦争」などではなかった。地球圏の支配を目論んだ「侵略戦争」だったのだ。

 以上の考察から、ジオンに正義なし、と筆者は結論づける。もう事実上の独立を果たしているにも関わらず「独立戦争」を宣言し、「スペースノイドの解放」を謳いつつスペースノイドを皆殺しにするジオンに、正義の欠片もないように見える。無論、連邦が絶対的な正義だとはいえない。確かに、連邦は暴徒に対する鎮圧やコロニーへの食料生産の負担を求めるなどの行為も行ったであろう。だが、それがジオンによる大虐殺を正当化できるとは思えない。

 余談であるが、このガンダムをテーマにしたオンラインゲーム『機動戦士ガンダムオンライン』で新都社作家の部隊ができたらしい。しかし、それはジオン軍の部隊だ。筆者としてはジオンに与することは許しがたい。そこで筆者も連邦軍のアカウントを作った。現在はまだチュートリアルをこなす状態であるが、将来的には新都社部隊を結成したいと思う。カイ・シデンのように「ジオンを徹底的に叩」きたい人は、ぜひアカウントを作って待機してほしい。我々は必ずジオンを打ち破る!

       

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