Neetel Inside 文芸新都
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自説自論
僕の好きなSF小説

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 最近、思うことがある。
 新都社にはSF作品が少ない、と。
 新都社には7669の作品がある(2014年2月13日調べ)が、「SF」で検索すると191の作品しか出てこないのである。(しかも、この中には作品名やあらすじに「SF」の文字列が入っているだけの作品も含むため、実際にSFジャンルの作品はもっと減ると思われる)少ない。
 こうも思う。
 そもそも日本でSFというジャンルが流行っていないのではないか?
 最近、SFでスマッシュヒットを記録した作品がないし(『宇宙戦艦ヤマト2199』のDVD・BDの初動が三万枚というぐらいしか印象に残ったのがない)、逆に大失敗をおさめた作品はいくつでもある。(『SPACE BATTLESHIP ヤマト』とか『ガッチャマン』とか)
 これはSFが好きな僕としては悲しいことだ。僕は、SFが人類の英知と想像力を結集した、素晴らしいジャンルだと思っている。それなのにみんなにそのおもしろさが理解されていない。それは非常に残念なことだ。
 確かに、SFがなんだか手の取りにくい、難しいジャンルになってきているような気がしてならない。2chのSF・ファンタジー・ホラー板を見ても、なんだかよくわからないスレがたくさんあって、しかも醜聞が書き込まれてるスレもある。また、ある大学のSFサークルが大学読書人大賞によくわからない理由で激怒していたこともあった。SFオタクというのがどうも近寄りがたい人々になってしまったようだ。SF専門誌も減った。今や、SF専門誌は早川書房の『S-Fマガジン』しかない。(ホビーマガジンの『宇宙船』は最近では特撮中心になってしまっている)しかも、その『S-Fマガジン』も掲載されている作品やコラムはなんだかややこしい、わけがわからないものばっかりで、手に取ってもとても買おうとは思えない。現代は「SF冬の時代」と言ってもいいかもしれない。
 どうしたらSFを復興できるんだろうか? そう思った僕はとりあえず僕の好きなSF小説を紹介してみることにした。全部で4作品だ。
「なんだ、たった4作品しかないのか」
「しかも、低レベルなものばかりだ」
「お前、本当にSFファンか?」
 もしかしたらそう思うかもしれない。確かに、僕はさほどSFを読んでいるとはいえないのかもしれない。好きなSF小説が、これだけしか挙がらなかったからだ。それに、文章も稚拙だ。作品の素晴らしさを伝えられていないかもしれない。作品もそこまで高尚なものを読んでいるとはいえない。だが、好きなものは好きなのだから仕方がない。少しでもSFの素晴らしさが伝わったら幸いだ。

・H・G・ウェルズ『宇宙戦争』
 押しも押されぬ古典SFであり、僕が初めて読んだSF小説でもある。
 この小説のなにがすごいかというと、やはりこれが「19世紀末に書かれた小説」だということだ。当時は飛行機も飛んでいないし、交通手段も馬車が主体だった。そんな時代にも関わらず、宇宙船やビーム兵器、毒ガス兵器などといった未来の技術を予見しているのがすごい。また、当時の最先端の科学(あくまで19世紀末に考えられていた科学にすぎないが……)に基づいて火星人の姿や生態などを描写しているのも、その当時にしては画期的と言えるだろう。
 また、筆者の人間に対する考え方が書かれているのも良い。作中、筆者は人類が他の動物や同じ人類でも未開の種族(タスマニア人など)を虐殺したことを挙げ、こう述べている。
「火星人が地球人の絶滅を企てたからといって、わたしたちにそれを非難する資格があるのだろうか? わたしたち地球人も、決して慈悲の天使ではない」(ハヤカワ文庫版28ページより)
 このような人類批判のメッセージが19世紀末に書かれたということは特筆すべき点である。
 さらに、火星人の攻撃から逃げ惑う人々の描写も素晴らしい。未知なるものに対する恐怖やパニックの描写は、現代においても色褪せることがない。
 この作品の「火星人が地球の細菌のために全滅する」というオチは今となっては有名であり、それに対して「白ける」「拍子抜けした」「つまらん」などという読者も多い。しかしながら、前述した筆者の思想を考えれば、このオチは妥当だといえる。「驕り高ぶった人類では倒せなかった火星人を、神が創りたもうた自然が倒した」ということである。
 また、ただ単純に物語として読んでも、火星人の攻撃で妻と離れ離れになった主人公が紆余曲折を経て奇跡的に再会するというストーリーは心にくるものがある。
 この作品はこれまで何度も映像化されているが、1953年のジョージ・パル監督作品と2005年のスティーブン・スピルバーグ監督作品が特に有名だろう。(また、ローランド・エメリッヒ監督の『インディペンデンス・デイ』はジョージ・パル版『宇宙戦争』を元にしているといわれる)僕が見た限り、原作への忠実度でいえばスピルバーグ版、面白さでいえばジョージ・パル版が優れているといえる。
 日本では創元SF文庫版とハヤカワ文庫版の2種類があり、僕はハヤカワ文庫版を読んだ。ハヤカワ文庫版は『スタートレック』シリーズのノベライズ版の翻訳を担当した故・斎藤伯好氏が訳をしており、わかりやすい訳がされていると思う。

・ロバート・A・ハインライン『宇宙の戦士』
 ハインラインといえばアイザック・アシモフ、アーサー・C・クラークと並ぶSF御三家の一人である。その彼が1959年に書いたのがこの小説だ。
 一般的に「『機動戦士ガンダム』に影響を与えた」作品として知られているが、この作品はそれだけではない。
 この作品の特徴の一つは主人公の成長を描いた物語であるということだ。過酷な訓練を経て立派な兵士として成長していく主人公の姿は、何かしら苦労を体験した人ならばきっと共感できるだろう。
 もう一つの特徴として、筆者の思想が強く入っているということが挙げられる。「軍歴がなければ選挙権が与えられない」という世界観は「権利を得たいならば、義務を果たせ」という筆者の思想が反映されているものと思われる。それが原因でこの作品は「軍国主義」のレッテルを貼られて罵倒され続けているのであるが。
 そして、最後の特徴として挙げられるのは「パワードスーツ」という概念を作ったということである。僕もこれが目当てで読んだ。実際、劇中におけるパワードスーツの描写はかなり詳しく、メカニック好きならばぜひ読むべきというレベルである。これに加え、日本のハヤカワ文庫版ならばスタジオぬえによるかっこいいパワードスーツの挿絵が入っている。(海外版ではパワードスーツはそこまで重要視されてないらしく、表紙に描かれているパワードスーツは酷いデザインのものが多い。Google画像検索などで見てみるとよい)
 総合的に考えると、メカニックが好きでかつ思想について語られるのが嫌いでない人であればおすすめできると僕は考える。長ったらしい説教をされるのが嫌いな人や反軍国主義者ならば、この作品が嫌いになるかもしれない。実際、この作品が日本で発売された当時は反感をおぼえる人が多く、ハヤカワ文庫版のあとがきにはこの作品についての論争の記録が書かれている。
 なお、原題である『スターシップ・トゥルーパーズ』という名で映画化されているが、僕は見ていない。パワードスーツが出ていないからである。
 日本ではハヤカワ文庫から出ている。本文以外では翻訳者である故・矢野徹氏によるあとがきが印象に残った。

・伊藤計劃『虐殺器官』
 デビューしてからわずか2年、享年34歳で亡くなった早逝の天才、伊藤計劃による作品である。
 9.11後の対テロ戦争を描いた作品であり、監視社会を描いている。
 とにかく描写がすごく、圧倒的なリアリティを感じる。戦闘の描写、日常の描写のいずれにしても緻密である。また、戦争におけるPMSC(民間軍事会社)の台頭や、指紋などによる個人認証の普及などを予見しているのも面白い。
 反面、『宇宙の戦士』同様思想的な面が強く、読む人を選ぶ作品である。「テロとの戦いにおいて監視社会が築かれるのはやむを得ないことだ」と考える人ならばキレるかもしれないし、「監視社会絶対反対、人権を守れ」という人ならば手放しして喜ぶ作品かもしれない。実際、物語終盤の主人公の行動について僕は「何だこの売国奴は」と絶句した。
 だが、好きか嫌いかと聞かれると、僕は確実に好きだと答えるだろう。

・ジョン・スコルジー『老人と宇宙』シリーズ
 アメリカの期待の新人、ジョン・スコルジーによって書かれたミリタリーSFシリーズ。
「人生経験を積んだ老人に強化した肉体を与え、宇宙戦争の兵士とする」というアイデアが僕には新しく感じられた。また、ハインラインの『宇宙の戦士』のオマージュとして書かれており、『宇宙の戦士』が好きな人なら好きになる作品かもしれない。
 だが、ネット上を見ると「よくあるミリタリーSFじゃないか、つまらん」という読者の声もある。確かに、同じようなミリタリーSFが氾濫しつつある現代においては陳腐な作品として見られるかもしれない。
 しかし、僕は思うのである。よくあるミリタリーSF、それのどこがいけないのか? 種族の存亡をかけて戦う、宇宙を舞台にして戦争をする、これほど血湧き肉躍る題材はないのではないか。とにかく、僕は面白いと思った。
 現在、日本ではシリーズが5巻まで出ており、僕はそのうち4巻までを読んだ。

 以上が、僕の今まで読んだ中で好きなSF小説だ。みんなは、SFについていいイメージを持てただろうか? 少しでもインスピレーションが湧いただろうか?
 新都社、ひいては日本のSFが少しでも活気づいてくれることを願う。

       

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