Neetel Inside 文芸新都
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EDENにようこそ
エデンにようこそ。(10/15)

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――――其の1

 目が醒めた。布団を押しのけて、上体を起こす。部屋はがっしりした木造、調度品は、このベッドのみ。朝の匂い。右、木枠の窓から青緑色の日光が射している。外は草原だった。左、は薄暗い。どこかへと通じているのだろう、ドアがあった。まぶたをこする。
 どうしてここにいるのかは分からない。けれど、ここは僕が居ても何も危害が無い、穏やかな場所だと感じた。
 ぎっ、ぎっ、と、うぐいす張りみたいな床を歩き、ドアを開ける。取っ手はなにかの金属だった。ひんやり冷たい。
 ドアの向こうは、廊下だった。空気は変わらなかった。牛の鳴き声が聞こえた。だから、あっちへ歩いていく。
 また、ドアだ。おんぼろな木造ドア、光が漏れている、この向こうは外みたいだな。また牛の声、さっきより大きく聞こえた。
 開ける。砂利が敷かれた広場と、その向こうに、柵があって、草原。そしてそこに牛が数頭。
 小屋の中よりも、すこし空気は冷えていた。空気は青い。
 歩いていく。裸足だったけれど、なんだかここなら何の危険も無いように感じた。
 なにかの金属で作られている柵は1mくらいで低い。錆びているその金属のさわり心地はつめたくて少しサビが指にひっかかる。出入り口をぎぃ、と押して開く。
ふと、牛の影からなにかが。
「あら、起きたの?」
 誰かが。
 牛の鳴き声ではない声だった。長い黒髪が風になびいた。肌は白かった。それから彼女は
「エデンにようこそ」
 と、穏やかに笑った。

       

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