Neetel Inside 文芸新都
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了 - the period -(10/19)

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――――其の5

「ぼくは死んでいる」
 食卓をはさんで、彼女は黙って聴いていた。静かだった。
「ここは生と死の中間地点だ」
 彼女は頷いた。
 なんだか食卓がゆがんだ気がした。涙かと思ったが、目を擦っても乾いている。不思議と穏やかな気持ちだった。たぶん、この世界が抽象的になってきているんだろう。
「それで」
 彼女が言った。
「これからどうするの?」
 ぼくは、
「一つしかないだろ。川を渡るんだ」
 彼女は、頷いた。

 ぎぃ、ドアを開ける。触ると、取っ手の金属の感触はまだ感じられた。静かだ。小川の流れる音が聞こえる。
「きみはぼくだね」
「あなただけじゃないわ。あなたを含むこの世界の一部よ」
「一部、か」
 一部、か。と頭の中で反芻して、
「ここでの生活はすごく短い間だった。ここは生と死の狭間だ。現実では一瞬の間だろう」
「だから大切にしなきゃいけないのよ」
「無為に過ごしてしまったな」
「気づいただけで十分よ」
「そうかもな」
「なんてお別れを言ったらいいか分からないわ」
「そうだな・・・いろいろあったり、なかったりしたけれど、」

「悪くなかった」
 ぼくは歩き出す。川を越えて、だんだんぼくは世界に溶けていった。
 悪くなかった、この世界と、ぼくの人生は。

       

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