Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      

ピーンポーン
「はいはい。今出ますよ」
俺はゆっくり腰を上げて玄関へ向う。
言っとくが俺は引きこもりだ。
「あ……おはよう……優君」
「ああ。おはよう千華」
午前9時くっきりに俺の家に来るのは必ず千華だ。
千華は俺の幼馴染で気弱で内気で陰気な奴だが、大事な俺の友人だ。
「まぁあがれ」
「うん……お邪魔します」
俺は居間まで千華を案内させる。
案内といっても何度も来てるから分かりきってるんだろうが案内しないと絶対に家に入らない。
千華は俺の許可を出るまで一歩も動かない。ずっとドアの前で待っている。
一回やってみたんだが、その日は雨だった。
2時間以上ずっと雨に打たれて待っていたという奴だ。凄すぎる。
「最近はやってないだろうな」
「うん……大丈夫だよ」
「そうか」
ちなみにやってないというのは別に怪しい薬とかじゃありませんよ。
決して法律的にいけないものではない。けど人道的というか、客観的に変なもんだが。
まぁ、要するにリストカットな訳ですね。
「兄さん、千華さん来ていらっしゃていたんですか」
「ん。そうだな」
「…………」
何故か目を伏せる千華。
千華と妹は仲が悪い。昔はよく一緒に遊んでいたんだけどな。
「それでは三人分用意しますね」
「う……あ……」
何が言いたいんだこいつ。
千華はいつも大体最後まで喋らない。
俺のときは最後まで言うんだけどやはりあれだろうか、幼馴染と引きこもりで同類みたいに思われているのだろうか。だとしたらアレだ、へこむわ。
それとめちゃくちゃ綺麗なのにまったく告白された経験がないらしい。
やっぱり性格的にだろうか。俺が言うのもなんだが分からなくはない。
「兄さん、食事ですよ」
「おう」
今日はサンドイッチか。
サンドイッチを俺が取ったとき隣で聞こえるか聞こえないか位の大きさで千華がボソッと呟いた。
「私ご飯とお味噌汁が良かった……」

――――この野郎。

       

表紙
Tweet

Neetsha