Neetel Inside 文芸新都
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君の目は真っ直ぐに
第参話 転校生

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 一体、何が起こった、いじめか?登校してきた僕の目に飛び込んだ光景は物置と化した僕の机。そして横の席に座る見かけない顔の小さな女。そして、その小さな女は僕を見るなりこう言った。
 
「おはよ、啓太ちゃん。笑」




第参話 転校生 




 誰?すげぇ馴れ馴れしく話しかけてきてるけど見覚えすらねーし。つか俺の隣って不登校の女子だったはずじゃんか、あっ、そうか席替えか。なんかうざそうな奴が隣になってるな、とりあえずこいつシカトでいいや。僕は教室のドア開けてから席に歩くまでの約5歩くらいの間に顔色一つ変えずに脳みそをフル回転させ思考をめぐらせた。そして冷静な口調で、

「邪魔だから荷物どけてくれな
「うわっほんまに聞いてたとおりやん!クールや!なに?それって意識してん?」

僕の言葉をさえぎりながらちっこい女は僕に話しかけてきた。あっけにとられてしまった、正直朝一の寝ぼけ頭でこの状況を理解するの不可だった。呆然としている僕にその女は、


「…、あっども、岡村千尋です、よろしく!」

めんどくさい日常が始まる、そんな気がした。




 「あー、えっと、つかさ荷物どけてくれよ。俺座りてぇんだけど。」とりあえずこいつのペースに乗せられちゃだめだ、冷静に対応だ。顔を見ないようにしながら言い放つが返事がない。チラッと顔を見てみると、このやろうこっちを見ながらニヤニヤしてやがる。なんか挑発してるようだ。
 「あれだっ、君ってプライド超高いでしょ、私のことガン無視ってかんじ。とりあえず挨拶してんやけど名前くらい聞かせろや。」
口がわりぃ女だ、まぁ挨拶しろってのはもっともか。にしてもむかつく女だ、もういっそのこと荷物ふっ飛ばして座るか。俺が荷物に手をかけようとしたそのとき、

 「啓太おはよ、昨日なんでサボった?あっ岡村さんもおはよう。」

俺とこのちび女の間に割って入ってきたのは洋介だった。雰囲気見て止めてくれたんか、確かに今ちょっとむかついてたしな。洋介はそのままその女と話している。
「啓太この子が昨日来た転校生だぞ、気づいた?初対面なんだしちゃんと挨拶しろよー。つか教科書とかまとめて渡されたから荷物多いらしいぜ、置かせてやれよ。」
 転校生?こいつがうわさの転校生だったのか、ぜんぜんわからんかった。言われてみれば確かに綺麗な顔はしてる、まぁ性格が悪そうだが。というかそういうことだったのか、それならそうと最初に言えばいいのに。いや、会話を拒んだのは俺か。ほんとに洋介がいなきゃ駄目だな俺は。
「あー、そゆこと。わりぃな。俺は啓太、荷物置いてていいぞ。」
やんわりと伝え席に着くと返ってきた返事は
「クラスの人の顔わからんなんて君もしかして不登校?昨日もサボってたみたいやし。」
だった。どうやらこの転校生、口はほんとに悪いらしい。これから毎日これが横にいると思うとうんざりだ、ただちょっとだけ面白そうでもあるけど。


 休み時間、転校生の周りは人だらけになっていた。さすがに話題性とルックスからかだいぶ人気者のようだ。遠巻きから見てる分には確かに美人で社交的ないい子に見える。いや、今朝のことは僕の態度が悪かったからなだけで普通にしてればいいこなのかも。しかし、この前までは人気者だった僕の立場的にはちょっと複雑だ。

「啓太、朝怒ってた?」
洋介にそう聞かれ僕はふてくされながら頷いた。やっぱり、という洋介は
「あの子お前に似てるから、たぶんお前ら合わないぜ。あんまり喧嘩するなよ。」
と続けた。確かに、と思いながら僕はあそこまで自己中じゃねーしとも思った。転校生はみんなの中心で楽しそうに笑ってた、ちょっと偉そうに。


 6限が終わり、僕は目を覚ました。実に爽快な目覚めだ、これなら最後の大会に向けて張り切って練習できる。荷物をまとめて部活にいく準備をしていると、転校生が話しかけてきた。

「ホントに寝てんのね、何しても起きんかったし。てか一緒に帰ろうや、啓太ちゃん。」
びっくりなお誘いだ、しかも啓太ちゃん呼ばわりされてるし。
「残念だけど僕部活いくから、それに僕んちはここら辺じゃないから一緒に帰れんと思うよ。」
「あー、大丈夫。昨日私んちの最寄り駅で啓太ちゃん見たから、スーツ着とったね。笑」


見られていたのか、なんともいえない気分になり教室を飛び出した。最悪だ、どの場面を見られたのかあまり考えたくなかった。
道場に着いて鏡を開けてもうひとつ最悪なことに気づいた。顔にマジックで落書きされていた。明日、なにか仕返ししてやる!そう思いながら何故か笑いがこみ上げてきた。

 転校生、ちょっと気に食わないがなんか楽しくなりそうだ。





       

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