Neetel Inside 文芸新都
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二君戯れよ
短編群・習作もどき

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                   瞼の君

以前から、私と付き合っている男性に対し、
ちょっと小汚いよだとか、服がダサいんじゃないのだとか、
ちゃんと交際するなら相手を選ぶべきだとか、
そういった押し付けがましい、助言とも苦言ともつかないものを、
幾度となく頂いてきましたが、どうしたって分かれるつもりはありません。
むしろ、その手のアドバイスを受ける度に、
私の心は、ややともすると意固地になって、
ますます彼に惹かれていく気さえするのです。

確かに、私から彼の事を贔屓目に見たとしても、
所謂イケメンだとかの部類には入りそうもないと評価しています。
けど、人間性や外見だとか、私はそんなもので彼を選んだわけではない。
何と言っても、彼は眼の美しい人でした。
正確に言えば、眼球、ですけれど。



あなたも、瞼を閉じて、その上を撫でてみて下さいませ。

白目に対して、黒目、即ち角膜が盛り上がっているのが分かるでしょう。
私はその手触りが好きで仕方がないのです。

また、それを蓋う瞼の柔らかさ、毛細血管から放たれる微熱、
そして、皮一枚隔てた先に、脆弱な器官が控えているという、
その危なっかしさが、何より甘美に感じるのです。

眼球周りの構成の完璧さと、私の奇癖を受けれてくれる度量を考慮すれば、
私が彼を選ぶのは当然の話でした。



二人でゆっくりバスで温まった後、寝巻きに着替え、
寝室の照明を消し、共にベッドに潜り込むのです。
セックスなどという不潔な行為はせずとも良い。
彼は天井を向いて、目を閉じて、私に身体を捧げて下さいます。
私は、その細身に覆いかぶさるようにして、
じっくりと堪能させてもらうことにしました。

そっ、と瞼を人差し指で一撫ですると、彼は肩を震わせます。
上から下へ、右から左へ、縦横無尽になだらかな丘を楽しんだ後、
彼の耳に息を吹きかけてみると、興奮したのでしょうか、
一瞬間、烈しく眼球を運動させて下さいました。
指の下から、膨らみが動き回る微細な感触が伝わり、私の心をも震わております。
この膨らみが、高すぎず低すぎず、しっとりと指先にフィットして、
なんともいえず心地良い。
うふ、という笑いが零れました。自分でも気味が悪いと思うところです。

続いて、中指背、第一関節と第二関節の間を用いて、
先程よりやや強く、押し込むようにして擦ると、
瞼と眼球の間から、空気が漏れて、僅かな水音みたようなものが聞こえました。
こうなるともう、堪らなくなるのです。

彼の華奢な両肩を押さえつけて、ゆっくりと互いの顔の距離を縮める。
つきだされた私の舌と、彼の瞼とが触れ合って、
ぬらり、といういやらしい音が生じたような気がしました。
舌触りは毎度の事ながら、絹を欺くほど、人とは思えない滑らかさで、
一舐め一舐め事に病み付きになりそうな程です。
現に今も、その滑らかさにのめり込んでいくのを感じておりました。
舌先だけで撫で回していたのを、更に唇を近づけさせ、
終には瞼の表面を完全に口内に納めてしまいました。

それからは彼はひっきりなしに喘いで、その度にまた眼球が回転し、
私の舌の神経を蹂躙するのでした。
暴れているな――  と。薄皮の下で、何者かが暴れまわっている。
楽しくて仕方がない。その何者かを、舌の先端でノックしてやると、
あっちへ逃げて、こっちへ走って、捕まるものかと一生懸命になる。
私はそれを散々追い回して、互いに良い加減疲弊したかという頃に、
ようやく唇を離し、一息つくのでした。

唾液溢れる口内には、まだ彼自身の温かさが残っている。
同時に、ふっくらとした角膜の造形が、確かな余韻として舌先に張り付いております。
透明に満たされた私の身体は、柔らかな眠りへと落ちて行くのでした。



現在は、こうして瞼の上からの愛撫で満足してはいますが、
果たして、何時か直接舐め回したく衝動に駆られるかと思うと気が滅入ります。
自分の欲求を満たすためとは言え、
他人の眼球を腐らせることは本位ではありませんから。
また――
この癖を継続していれば、その内に、
彼のものと、彼自身との区別がつかなくなり、
仕舞いには、抉り出したそれのみに愛情を注ぐ事になったりはしないかと、
我ながら暗澹とした未来に慄いたりします。

しかし、あの輝く黒部を有する、血走った白球を、
手の上に転がしてまじまじと見つめたいという思いは、
さりげなくも強く、脳髄を支配し始めているのでしょう。





想いが先走るばかりで、読む分には詰まらないものができましたな。
全く、こういうのを習作とは呼ばない。
乱歩先生を意識して、オドロオドロした表現を散りばめたかったのですが、
どうも機械じみたぎこちない書き方になって仕方がない。
一人称視点も練習しなくてはいけませんな。
それにしても、一番の失敗は心情描写が無いことですね。
この手の変態モノには最も必要なものなのでしょうが、私はどうしても苦手だ。
今回は一気呵成に書き上げましたが、いつか時間をかけて練り直したい。

さて。実際に眼球フェチの方は随分多いかと存じますが、
皆さんはどのような経過の下に、そこへ至ったのでしょうね。
よくよくお教えいただきたいところで御座います。

       

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Neetsha