一部屋八畳の安アパート『弐位斗館』。その窓際に俺のベッドは置いてある。
現在時刻は夜一時半。真っ暗な部屋の中、ベッドに腰かけて黙祷をしていた。
少しして、窓を軽く叩くポルターガイストに、待ち構えていたかのように眼を開ける。
「行くぞ」
「ああ」
窓の外には白き少女――冬羽(ふゆう)が無表情にこちらを睨みつけている。
我ながら情けない、こんな誘いに乗ってしまうなんて。
「早くしろ」
「……ああ」
“ようやく”か、とため息をつくふりをして、深呼吸をした。
「……」
だが、それも悪くない。
Ep5.死ぬことに慣れろ。
ベットから腰を起こすと、その下――ベッドと床の――デッドスペースに右手を突っ込む。ごそごそとせわしく右手をうごかし、“獲物”を取り出す。
――聖刀「百日紅(さるすべり)」
ヤクザが使う必須アイテム“匕首(あいくち)”に似ている純白の木でできた、柄と鞘だけの日本刀。
俺の住むマンションの東にある、高山。そのふもとの白龍神社に奉納されていた宝刀だそうだ。龍神の魂の宿る刀として祭られていたやつを、冬羽が持ち出し、俺に渡した。