「……なぁ、お譲ちゃん」
空を見つめ、溜息を吐く。
大事なことを確認しなくてはならない。
「もし、優勝したら……。願いが一つだけかなうって本当なんだろうな?」
厨二設定くさい話である。かくして、俺たちが交わした“契約”もそのような胡散臭いものだった。
――“何かしら”の“戦い”で、“勝ち残れば”“願い”がかなう。
普段だったら馬鹿ばかしい話である。親友である尚紀が、このような話を持ちかけてきたのなら「死ね」の一言で一蹴していた。マジで。
「ああ。本当さ。生き残れればな」
だが、持ちかけてきたのは目の前にいる白い童である。幼馴染の尚紀とは違い、まずこいつは人間じゃない。そして自らを龍神と名乗る“半透明の存在”だ。
「前にも聞きたかったんだが、お譲ちゃんには何の利点がある?」
「聞いてどうする? お前のような糞餓鬼にはとうてい理解できないぞ」
そういって「ふふふ」と笑う。
うまく逃げたな、こいつ。
「なぁ、この“お守り”ってずっと首から下げてなきゃいけないのか?」
気を取り直して別の質問をぶつける。多方向からの質問は、本音を出しやすい……はず。
「別に、首から下げる必要はないさ。私が“肌身離さず持っていろ”といったのにもかかわらず、忘れてくるからだ。お前に死なれては私自身も困るんだと、何度言えばわかる?」
「それはわかるんだけどさぁ……、この“お守り”ダサいんだよねぇ……。俺の姉ちゃんも、あきれて何にも言わないほど、ダサいんだよねぇ……」
割と本気でぼやく。
それをしり目に白い少女は「ふふふ」とまた笑う。
「安心しろ、“それ”はお前以外には見えてない。見えるのは“同じような奴”だけだ。さぁ、そろそろか」