Neetel Inside ニートノベル
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「今回はこれで終わり」

 学生服の少年が一瞬光に包まれ、ジーパンとパーカーといったラフな格好に変わる。
 さっきまで持っていた鎖鎌もいつの間にか、いつも持っているギターに変わっていた。
 俺自身も意識を取り戻し、“あらゆる”痛みから解放され、“左手を”軸に起き上がる。

「和葉さん、あなたは何ものなんですか? ただのミュージシャンとは思えないですよ、本当に。てか、どんだけ武器に精通してるんですか? 刀、弓、槍はもちろん、薙刀や鎖鎌まで……“何度殺された”ことか」

「んー、ただの亡霊だよ。今は、ね。大輔くんも“人間にしては”達人並みの上達だよ、うん。手首を落とされても動じなくなったし、ね」

「そりゃ、五体を順番に落とされたり、首を半分だけ斬られるよりかはマシですよ」

 ニコッと笑う笑顔が、俺にはちょっと寂しく見えた。
 この相手に今晩“殺された”回数、実に“二十八回”。

「ただし、この戦いで勝ち残るには、“達人”ではだめなんだ」

 俺と和葉さんの会話に、白い少女が割り込んできた。なんとも不服そうな言い草である。

「まだまだ“練習”が必要だ。無傷で勝たなくては先が思いやられる」

 そう、これは“練習”だった。双桜樹公園の亡霊である和葉さんの力を借りて、来るべき戦いの前哨戦。だからルールもこの公園内といったような縛りがあった。
 実際の“本番”の戦いとは、いつ何時始まるか分からないものらしい。突然“時間”が止まり、敵が襲ってくる……らしい。

「勝てばいいんだろ? 勝ったら戦いで受けたダメージはチャラになるんじゃなかったのか?」

 勝てばダメージは“無くなる”。正確には“無かったもの”となる。相手の存在を抹消することで、起こった事象がなかったことになる……というまぁ、何だかよくわからないがそういうことらしい。
 “練習”では公園内で受けたダメージは、俺が“死ぬことで”、すべてのダメージが“無くなる”ように和葉さんがルールを組んでいた。まぁ、俺が勝ってもいいらしいんだが、それはまだまだ先の話daze。正直勝てる気がしねぇ。

       

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