「今のお前では、“敵”には勝てん。そこらへんの人間と思うな。相手は“何年生きているかわかんない”相手なんだからな」
“何年生きているかわかんない”、か……。
冬羽の説明によると、俺がいま首から下げている“お守り”、これを受け取った時点で、肉体の成長が止まるという。つまり“不老”状態になるそうだ。
だが、“不死”ではない。首をはねられたり致命傷を負えば死ぬ。いつ何時現れる俺みたいな“有資格者”と戦うための時間を約束してくれる、まさに“お守り”ってわけだ。
「私が知っている中でも最低で二百年生きている奴がいる。その間、訓練をずっと続けているんだぞ。そんな奴にたった今剣術を覚えた奴が勝てると思うか?」
俺は言葉が出なかった。
今日稽古をつけてくれた和葉さんでさえ、十分の一も本気を出していない。“それがわかる”くらいが今日の成長といっていい。ってか和葉さんって何者?
「だから、まずは“死ぬことに慣れて”、“生きのびることを覚えて”もらう。和葉の力があれば生き返らせるのくらいは簡単だからな。長い訓練に打ち勝つには、質と量の訓練しかない。……もちろん、明日も死んでもらうぞ」
こんな生活がいつまで続くのか……。
もしかしたら俺は“殺される前に”“殺されてしまう”かもしれない。いや、“殺されてる”んだけれどね……。
最初は指が二、三本無くなったくらいでギャアギャア喚いていたが、今ではもう片腕を切り落とされたとて絶叫する気すら起きない。
「まったく」
死ぬことに慣れるってのは、複雑だ。