「君は亡霊に何のようがあってここに来たんだい? 僕でよかったら、話ぐらいは聞くよ。都市伝説に頼るぐらい、切羽詰っているんだろう。話してくれてもいいんじゃないかな?」
青年はしばし目をつむり、決心したようにうなずいた。
「実は、俺、野球部のピッチャーなんです。小学生のころから野球やってて、野球が俺の人生って言えるくらいに。一生懸命頑張って、この前、念願の甲子園進出が決まったんです。でも、つい最近、事故が起きて。俺、もう投げられなくなっちまったんです」
我慢が出来なくなったというようにすすり泣きだす青年。
「別に、俺が投げられなくなったのはいいんです。でも、でも。今まで一緒に頑張ってきた仲間たちに、悪くてっ! だって、俺がいなきゃっ! キャプテンの、俺がいなきゃっ……あいつらは、あいつらは……」
青年は泣き崩れ、それ以上は語らなかった。
「そうか。……心残りなんだね。部活の仲間たちに対する罪悪感。それが君を縛り付けるのか。うん。これを見てごらん」
ギターの彼は右手を差し出す。瞬時、その上に、何もない空間のはずなのに。そこにテレビの画面のような映像が再生される。
「君の高校の甲子園の中継だよ。もう十年くらい前のことだね」