「ン? 言ってみな」
何でか知らないが、オレと委員長は友達になった。
確固たる何かがあったというわけではなく、ただなんとなく。なんとなく友達になった。
つまりたぶん、『気が合った』、ということだろう。
そして気がついたら親友とも呼べる存在になっていて、同じ高校に進学していた。そんな委員長が誰もいなくなった教室でオレに改まった態度で話しかけてきたのだ。
「俺さ、天使なんだ」
突然、虚を突かれて、オレは吹き出す余裕すらなかった。
「天使? 何でまた、それをオレに?」
歯をかみ締めてオレは返答を返す。
どっちみちありえないことだ。
「うん。実はな、俺、ある一人の天使を探してるんだ」
聞くところによると、委員長は十年前に人間界に逃げた一人の天使を探す任務を請け負った天使なんだそうだ。何でもその天使は、天界での親友だったんだと。
「期限が今日なんだ」
そう、委員長は五年間でこの堕天使を見つけねばならなかった。大体この近辺だということで、天使界では直ぐに見つかるはずの、楽な任務だったらしい。結局、見つからなかったらしいのだが。
「ふーん。それで?」
「別れを言いに来た」
委員長は今日で人間界を去るという。
オレは半分ホッとしながら委員長を睨みつけた。
「大体、天使ってさぁ、自分の正体を人間にばらしちゃあだめなんじゃねぇの?」