そうだ。確かそんな掟があった気がする。
「ああ、そうだよ。でも、お前にだけは本当のことを言っておきたかったんだ。親友だかんな」
そこで、オレは我慢できなくなって笑った。かすれて声が出なかったが。
「そんなに笑うなよ」
委員長が苦笑しながら言う。
そこでオレは姿勢をただし、急に態度を厳粛なものに切り替える。
「いいかげん、本当のこと言えよ……転校するんだろっ、お前」
オレはよく知っていた、委員長の正体を。あいつは『そういう』性格なのだ。
委員長は目を丸くした。そして、直ぐに鼻で笑った。
「そうだな。……うん、そうだよ。なんでもお見通しなんだな」
委員長はオレに背中を向けた。
教室の扉まで歩いていき、その扉の前で立ち止まる。
そして、振り向かずにこう言った。
「じゃあな。バイバイ、人間にしちゃあお前は、いい奴だったよ」
そういって、あいつは教室を出て行った。
あいつが去ったあと、オレはため息をついた。そして、椅子から立ち上がると、あいつが立ち止まったときわざと落とした一枚の羽を拾い上げる。
「『人間にしゃちゃあ』、か」
純白の、人間には決して見、触ることの出来ない純白の綺麗な羽だった。
「あいつ、結局気がつかなかったのかな。最後まで」