Neetel Inside 文芸新都
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俺はその日の定時後遅く、胃液で荒れた喉を咳きこませながらメモ帳にいそいそと文章ををしたためていた。
今日の出来事を思い出しながら、動揺と悔しさに涙を滲ませながら。



 今日の昼休みの終わり間際、鉄火達とそれなりに楽しいトークを繰り広げている真っ只中に
俺はTIGと眼が合い、彼の「こっち来いやゴルァ!」の視線に従い
彼の後をついていかざるを得なくなったのだ。
鉄火と向井がどんな顔をしていたのか、確認する余裕すらなかった。
ただ、怖かった。


TIG
「おい、お前今日仕事終わったら現場に寄ってけや、逃げるなよ」

それだけ言うとTIGは昼休み終了のサイレンと共に現場に戻って行った。
その足で俺は事務所に帰ろうとしたが、現場に行こうとする鉄火にすれ違いざま声をかけられた。

だが、俺は彼女が何て言ったのかすら覚えていない。
ただ、ただ恐怖で俺の心は塗り潰され、心は暗く沈んでいた。
返事をする余裕なんてあるはずもなかった。

定時後、何かに急き立てられるかのように俺はタイムカードを押し、TIGのいる現場へ
向井が何か俺に話しかけていたが、俺は聞こえていないふりをして、そのまま小走りで現場へ走って行った。

遅れたりして更に彼を怒らせてしまうと大変だから。
俺はこうして今まで自分への被害を最小限に抑えてきたんだ。

現場のTIGの持ち場に行くと、彼がいきなり俺の肩を掴んで俺の腹を膝で蹴りあげた。

TIG
「事務所のオスが何いちびっとんじゃ」

ただ抑揚のない声でそれだけ言い、俺はもう一度腹を前蹴りされた。
腹の中で異様な痛覚が渦を巻き、溢れたそれが俺の胃をうねらせた。

しっとりと缶ジュース臭い汚物が俺の喉を押し上げ、一気に中国の大海嘯のように外界へと放出される。
胃液とジュースの混じった汚物をシタシタと口から垂らしながら、俺は涙と嗚咽でむせ込むだけだった。

「痛くて苦しいけど、これを耐えたら多分TIGは満足するはず」

ゲロを吐くのには慣れている。
俺はこうやって「効いてるw効いてるw」というアピールをすることでこれ以上の苦痛から常に回避してきた。
もはやゲロマイスターと言っても過言ではない。

案の定、TIGはそこそこ満足した顔で黙ってその場を去った。
俺は洗面場で涙だらけの顔と口を流し、切り忘れたPCの電源を切りに事務所に戻った。

事務所には当然誰もいなかった。最近は残業も少ないからか、皆定時で争うようにして帰っていく。
俺は自分の椅子に座り、今日のストレスをどこに逃がそうかと考えていた。
しばらく考えていたが

「俺、いつまでこんな生活し続けるんやろ?一生なんかな?一生虐められながら、おっさんになって一人で生きていくんかな?」
そんなことを考えていると、不意に涙がぼろぼろと流れ、どうしようもなく自分が情けなくなった。
メールの着信が聞こえたが見ずに無視し、独りで泣いているうちに、昨日の夜更かしの影響か俺は居眠りしてしまっていた。


2時間程たったのだろうか。俺は不意に居眠りしていたことに気づき時計を確認した。八時を過ぎていた。
TIGに蹴られた頃は辛うじて夕日が残っていたが、今はすっかり暗くなっている。

メールが届いていたことを思い出し、携帯を開き内容を確認する。
鉄火だった。

>件名「今日TIG男にご飯誘われてるんだけど」
>本文「「**←俺」 が来るなら行くんだけど、今も残業中かーい?返信ちょうだいね」


すでに着信から2時間が経過している。まさにW死亡フラグ。

「どうしよう、どうしようおうおおあぼこあbkl」あgんこ凹」

・彼女の元へ逝く→TIGに当然発見される→文字通り逝く

・彼女の元へ逝かない→鉄火「最っ低!」→俺オワタ\(^o^)/

・彼女の元へ逝く→TIG「鉄火は俺の女でなぁw」→鉄火「キャハハキモーイ!童貞が許され(ry」→俺オワタ\(^o^)/

色々悩み考えたが唯一の俺的安心ルート

・彼女に電話→「なんでそんなに返事が遅いの!」  これも怖い
・無視→俺オワ(ry

何をどうやっても一人で泣いてた俺がアフォだったんだ、俺がメールを開いてさえいればここまで悩むことはなかったはず

「とはいえ、独りごと言ってる場合じゃない、どどどどどどどうしたらええっちゅうねん」

ふと、とりあえず片付けをして、電気とPCの電源を切ろうとして俺は固まった。
眼の前には、一基のPC、鉄工所で使っているようなPCなので、ネット閲覧の監視者なども居ない、まさに使いたい放題。
同時に俺の頭の中では昨日訪れたワンダーランドの民の顔を想像していた。

俺の実況で、楽しんでくれる人がいるかも知れない。アドバイスしてくれる人がいるかも知れない。」


俺はIEを立ち上げ、Googleのトップページを開き、馴れた手つきでキーボードを叩いた。

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