Neetel Inside 文芸新都
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ー俺は彼女の顔を横目に見ながら、彼女を家に送り届けようと車を走らせていた

彼女は俺に礼を言い、俺と二人きりになった途端、顔色を変え、楽しそうに話を始めた。

「ありがとね、来てくれなかったら明日口きかなかったよ」
「なんで迎えがあんなに遅いの?」
「いっつもあんなに遅くまで仕事してんの?」

俺は彼女の質問攻めに遭い、しどろもどろながらも彼女に答えていく。
だが、話が続かないのと、先ほど殴られた腹が痛んで運転に集中できないというのもあり

「あの、ちょっと、腹まだ痛いんで静かに・・・」
という史上稀に見るKYな発言をする。

それに対し彼女は
「ああごめんね、まだ痛かったんだ、ごめんね」
そう言い、黙って窓の外を見た

正に後悔先に立たず、俺のお息子は先走って立ち上がっているというのに。



しばらく二人とも黙っていたが
仕掛け人である俺自身がその沈黙の空気に耐え切れなくなり

「ちょっと、回復したで、ありがとうかばってくれて」

とようやく言うことが出来た。
この俺が人にお礼を言えた。
リアル世界で本気で礼言うのは本当に久しぶりだ。

彼女はこちらを見て優しく微笑んだ後で
「うん・・・・・・」
とだけ言った。

俺はその短い返事に少々物足りなさと寂しさを感じてしまう。
俺の黙ってろ発言に彼女が萎えてしまったのかと思ったが、そうではなかった。
逆に機嫌を直してもらおうとオロオロする俺に彼女が優しく言った。

彼女も仕事の影響で腰が痛いので、早く家で休みたいということだった

その後はしばらく彼女とメールの内容や俺と彼女のバイクの話などをしていたが
彼女の説明に従い運転していくうちに、彼女の家の傍までもう来ているということだった。
意外に俺の家と近かった。車なら15分くらいだろうか。

かくして、俺の緊張と痛みに支配され続けたドライブは終了した。

車から降りながら鉄火が俺に話しかける
鉄火
「じゃあね、ていうかさ、私らお互いのことあまりに知らなさすぎじゃない?」

「そうっすね、じゃあもっと良く知りましょうか、またメールしますよw」
鉄火
「ていうかこんどFTR(※1)見せてよ、私のTT(※2)と一緒に出かけようよ」

「寒いよ、この雪フル季節に」
鉄火
「わーヨワ男じゃん、たまには外に出ようよインドア少年!」

「まあ、考えとくっす」

そういう俺を見る彼女の顔は、やっぱり笑ってた。ー




※1 FTR・・・主人公=スレ主の乗るホンダ製のバイクの名称(FTR223)
        排気量223cc、ストリート系カスタム車のベース車として若者から大人気となる。
        
※2 TT ・・・鉄火の乗るバイクの名称(TT250R)
        排気量249cc、高座席のヤマハ製オフロード車
        発売当時は乗り手を育てるバイクとしてエンデューロレーサーから大きな人気を得た
        
        

       

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