Neetel Inside 文芸新都
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俺は昨晩の怒涛の報告を原因とする猛烈な眠気と闘いながらも出勤のタイムカードを押し、
昨晩寝ようとした折に届いたメールを開き、独りほくそ笑んでいた


鉄火メール
「もう寝てたらごめんね。。お腹痛くないか?すごく気になってお姉さまは眠れないよ
 嘘、私は腰が痛くて眠れないんだけどね(笑)
 おやすみ。約束は守ってよ!今度バイクで三田のアウトレット連れてってよ!」


ニヤつきながら朝起きてからから何度もこのメールを確認している。
先ほど彼女は俺と会ったときに、敬礼する感じで「ヨッ!」というポーズを取り工場へ入って行った。
彼女の色気も糞もない作業ツナギが、かえって俺の妄そ・・いや、彼女への好意を増幅させる。

今夜は・・・ツナギの女の子の画像で御握りだ


工場内の安全見回りを終え、ミーティングも済ませる。
TIGに話しかける用事があったのだが、彼は俺を素無視している。
仕事で話す内容ではあったのだが、彼と口をきかずにすむのなら、と俺もそのまま次の話題に移る

そもそも、無視されたからといっても、俺は傷つくことなど一切ない。
多感な中学生時代を無視されたという経験が俺を強くしている。
完全に無視やハブられるといった寂しさからは解脱している。
何も考えずに自分のやるべきことだけしてたら会社では生きていける。
無視されることは辛い経験だったけど、皮肉なもので今の俺の役に立っている。
本当に皮肉なものだ。

ミーティングを終え、事務所に帰ろうとすると鉄火が俺を呼んでいる。
ファイルケースを置いて彼女のそばに駆け寄ると、
彼女が振り向きざまに俺の目の前にコップを差し出してきた。

鉄火
「ホイ、コーヒー。あったかいよー」

俺はステンレスボトルの大きめのコップに入れられたコーヒーから立ち上る湯気に当てられ、
軽く眼をしかめる。彼女は申し訳なさそうにコップを手元に引いた。
俺は間抜けな顔で彼女の手元を見ているだけだった。

鉄火
「飲む?寒いしね、これ飲んだらシャキッとするかもよ、君でも」

俺は寝ぼけながらもコップを受け取り、なんだか申し訳ない気持ちと
少々照れくさい気持ちになり、コーヒーをすすりながら工場を出ていった。
勿論、TIGの強烈な視線に刺されながら事務所に帰っていくことになったのだが。




       

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