Neetel Inside 文芸新都
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 今晩はコンビニに行った後二つ失敗をした。
その顛末はこうだ。


コンビニで立ち読みを済ませた俺は今週号のジャンプの展開に軽い興奮を覚えていた。
足取りも軽く、気分も良い。こんな夜はランニングなどする振りをしながら帰るのが気持ちいい。

「デビルバットゴーストゥ!」

時にピッチを上げて全力でダッシュする。並んでいる街灯が次々と俺の顔を照らしていく。
周りの風景も俺のダッシュに合わせて勢いよくスクロールしていく。
途中、会社帰りであろうOLのお姉さまと出会い頭にぶつかりそうになり、

「ヒィヤアァァ!」

という悲鳴を上げられたものの、ジャージのの裾から俺のお息子が顔を覗かせているわけで無し、
何も動揺することはない。ただ

「イヒィイ、す、すんません!よそ見していて俺が悪かたっでsっす!」

と冷静に対処することで事なきを得る。さすが俺だ、今日も今日とてスマートさ。
鼻歌混じりにアパートの階段を上がり、鍵をポケットから出す。

「魔界777つ道具、イビル・・・・・・・・・鍵」

とっさに思いつかなかったので独り言も控えめに。これ集合住宅に住む者のマナー
これから独り暮らしをしようかという方は覚えておくように。

部屋に入り携帯をチェックすると鉄火からの着信があった。
急いでかけ直し鉄火との更なるコミュニケーションを構築せねばならない。

着信履歴から鉄火にメールする。
まるでなりたての恋人同士が行うようなウブなコミュニケーションに軽く興奮する。

俺メール
「ご飯終わったんかな?」

鉄火メール
「うん、終わった。今からお風呂入るんだよ。
今日はご飯が時間的に遅かったからあまり食べられないし
すぐに食べ終わってメール待ってたんだけどね(笑)」

俺メール
「お風呂か、ごゆっくり」

鉄火メール
「覗くなよ(笑)  (警察の絵文字)呼ぶよ(笑)」

俺メール
「覗かん、まだ覗かんよ!」

ここで漫画は好きでもアニメとか見ない俺でも分かる某セリフで
ガンダム耐性をチェックしようとしてみたのだがいまいちな反応

鉄火メール
「いつやるのよ(笑)普通に男だね、>>1
風呂行ってくるよー」

ふふ、これはまさに友達以上恋人未満な展開、こういうのも悪くない、悪くないぜ。
PCを立ち上げすぐさま報告、しかし住人の指摘に俺は衝撃を受ける。

>>「メール待ってたんだけどね(笑)」
>>次は、こーゆうのにはちゃんと反応してあげて

な、なんということだ、普通の人たちはこういう所にまで気を行き届かせて
フォローのセリフなどを送信したりするということなのか?
普通そんな所まで気を使うの?どうなの?俺死ぬの?
だとしたら人とのコミュニケーションというものは俺にはとても難しいことなのじゃあないのか。

とはいえ、失敗をしたのは事実、真摯に受け止める振りをして住人と雑談していた。
やがて鉄火からの電話が鳴る。


鉄火
「やあ、まだ起きてた?」


「んーまあ、起きてました。」

鉄火
「あ、そうだ。週末って三田のイオンとアウトレットに行きたいんだけど、それでいいでしょ?」


「いいですよ、それで」


買物イベントの場所も決まり、時間や待ち合わせの方法なども確認したりしていたが
やがて会話を何とか続かせようとした俺はつい調子に乗ってしまい、アホな質問をしてしまう。







「~姉さんって細身やけどナイスなボディラインやもんね、どんぐらいあんの?」






鉄火
「・・・・」









俺は一気にアイスエイジにご招待されてしまい、これこそがKYなのだと実感する。

鉄火
「あのねー、私、あなたの恋人ではないんだけどねーww」


「すいません、もう言わんです」

鉄火
「ははっ!ほんと君は素直だわ、嫌いじゃない」

恋人にすらなっていないのにこの質問、俺は取り返しのつかないことをしてしまった。
だがそれも会話が途切れてしまった俺を彼女がフォローしたため、とりあえず事なきを得る。

短時間で二度の失態を演じ、とてつもない後悔の念に苛まされながら俺は通話を終了し
今週号のジャンプが面白かったことなどアンドロメダの彼方に消え失せ
失意と共に御握りを済ませ、早々に永眠した。

       

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