Neetel Inside 文芸新都
表紙

会社でお姉さんと仲良くなったのに凹られた
フラグボキボキの買い物イベント!更に決まったスレ主の名前、その名も凹! 1 (4/14うp)

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 まず家を出た俺は、雪が振っていたため安全運転で向井の家に向かう。
彼女の家は以前忘年会の送り迎えで乗り合わせていった経験があるので、何とかたどり着けるだろう。
道すがら道路に目をやると、陽ざしに照らされた霜と雪が細かく輝いているのが見える。
バイクで出発していたら転んでいたかもな、と俺は安堵の息を吐いた。

「だが流石4輪だ、気温が低くてもなんともないぜ」

快調に向井の家のある住宅街に入り込んだところで先程の独り言はどこへやら、
俺は4輪に乗っていながらなんともなってしまう。
俺の方向音痴がここにきて覚醒してしまい、俺は彼女の家へのシャイニングロードを完全に見失ってしまったのだ。

俺の方向音痴を知ってもらうに丁度いいエピソードがあるのだが、信じてもらえないかもしれない。
何しろ俺はかつてバイクで高速を使い関西国際空港に行こうとしたものの、高速の上から見える太陽の位置から道を間違えたことに気づき、降りようとした料金所の看板を見たところ、そこが「守口」であった位なのだから。
とはいえ、俺自身、道を覚える気も無いし、待たせる人も居ないしで目的地に時間通り辿りつく気すらないというのも問題なわけなのだが。
というわけで俺はバイクで遠出というのには激しく向いていないのかも知れない。


>>神戸から関空行こうとしたら守口に着いた
>>を何度頭の中でシミュレートしてもあり得んwwwwww


大通りから住宅街に入るところまでは覚えているのだが、住宅街にも関わらずその地域は一方通行が多く、俺はあてずっぽうに車を走らせているうちに本格的に迷子になってしまう。
そこで文明の利器、携帯をポケットから取り出した俺は向井にレスキューコールを掛ける。

向井
「ええ?迷ったン?何でこんなん迷うんwwwww今どこ?」


「いや、あんな、○○酒店があってな」

向井
「ほなすぐ前やからっ (ブチッ)」

彼女はすぐさま電話を切り、呆気にとられた俺はポカンとして携帯を見つめていた。
このクソガキが、人がせっかく迎えに来てあげたというのに、何が「なんでこんなん迷うんwww」だ。
怒りの悪態をついたが、バックミラーで自分の顔を見ると、明らかにキョドった孤男がそこに映っていた。

車中から住宅街を眺めていると、100m程先の家から向井が跳ねるように道路に駆け下りてきた。
今朝からの異常な寒さの為か、彼女は白の烏賊のようなクシュクシュしたダウンをその身に羽織り、
グレーの細見のワンピースで装備を固め、更に足元も白のブーツで着飾っていた。
その白のブーツも烏賊のようだ。髪はいつもの如くくるくるくるrくくsくrくるrくkるkるに巻いている。
仕事の行き帰りも、彼女は可愛らしい服装に身を包んでいるが、今日はいつもより特別だ、かわいく見える。いいね、合格点だ。


>>くしゅくしゅした烏賊wwwwwwwwwwwwwwww

>>烏賊みたいなやつってなんだ?wwwwwwww
>>予想出来ないwwwwwwww

>>烏賊ってチュニックとか?

後にスレで報告をしながら、烏賊のようなダウンとブーツについて軽く議論したのだが、
あれは世間では「シャーリングダウン」と呼ぶらしい。覚えておかねば。
イカで分かって貰えるかと思ったのだが、今は反省している。


彼女は俺の車を見つけるとこちらに走る素振りを見せたが、俺の目の前の酒屋の前で小走りを止め、先ほど説明した酒屋へと入っていく。
朝から何を飲もうというのだこの神聖な雪降る日に。
俺がそれを咎めでもしたら

向井
「酒は飲んでいません、なめただけ、ごっくんはしていません」

とでもいうつもりか。何を考えているんだこの巻き髪少女め。
そして彼女はすぐさま酒屋から出てきて、小走りでこちらに向かってくる。
途中彼女のブーツのヒールが小石にでもつまずいたのか、向井は足をくじくような様子を見せた。
俺はかわいいな、まるでデートみたいだ。と顔が緩むのを我慢しつつ、車のロックを開けた。

向井
「おはよう!!ちゃんと起きれたみたいやね、寒っ」


「寒いなあ、雪やでコレ」

俺は間の抜けた返答を返す。やはり女性と二人きりというのはやりにくいものだ。
鉄火とはそこそこ喋れる様にはなったが、ほかの女性となると途端に会話スキルが下がってしまう。

向井はシートベルトを締めた後、手に提げていた小さなビニールから缶入りの紅茶を取り出し、
車を発進させようとしている俺に差し出した。

向井
「はいこれ、迎えに来てくれたお礼」


「ああ、おいしそう」

緊張していたのもあった所為か超棒読みで間の抜けた感想を述べた俺だったが、その時は礼すら言ってない自分にまるで気が付いてなかった。
ここで

『ありがとう、頂くよ。気が利く女性はもてるんジャマイカ』

という台詞くらいは言えるようになっていなければいけないのに、今にして思えばなんて間の抜けた応対だ、我ながら情けない。


>>気が利く女性はもてるんジャマイカ
>>これダメじゃね?

>>缶紅茶見ておいしそうってwwwwww

>>それもそうだがどこをどう解釈すれば烏賊なんだよww


最初から失敗を犯した俺だったが、ここからはずっと俺のターンだぜ。
向井の俺を見る目を今日から一味違ったものにするために、鉄火の家に着くまでに俺のスイーツな会話で向井を喜ばせてあげよう。

俺のイチモツを握る手は今日はハンドルを握っているが、会話の主導権は俺が握るぜ!
向井の心を、狙い撃つぜええ!!

       

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Neetsha