Neetel Inside 文芸新都
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鉄火は冬だというのに鼻に汗をにじませて、埃っぽい顔をタオルで拭いながらニコニコしている。
年は俺よりも上だとは聞いてるけど、いくつ位なのかは知らない。聞く度胸がないので知ろうとも思わない。


よく、対人スキルの低い人たちは
「人に自分がどう思われているのかと思うとうまく話せない」
「自分をうまく表現できないから、嫌われると思うと接点を持つ気がしなくなる」

などという言い訳をするけど、俺はちょっと違う。

俺は
「人に自分がどう思われても、やっぱり一人が好きだからこの性格をどうこうしようとも思わない」
なのであって、今の自分をとても気に入っているわけだ。

そんな性格だから俺は鉄火が、俺に唯一仕事以外の会話をするたった一人の人間だというのに、
彼女のことを知ろうともしない。

そりゃ自分で自分がずっと孤男で、童貞だってのにもうなずけるってもんだぜ。



俺は鉄火の溶接した製品を観察する振りをする事で、会話の続かないこの妙な「間」を取り繕おうとした。
だが彼女は俺に背を向けて、四角形のオイル缶に腰を掛けて座っていた。
俺がまともな「会話」すらできない人間だということに気付いているのだろうか。


突然鉄火がポケットをまさぐりながら俺の方を向いた。
「ねえ~クン、君携帯持ってんの?」

ふぇ、何ですか、壺売りですか。俺貯金はあるけど理由があって下ろさないことにしてるんですけど

俺の間の抜けた「ハィ?」という声を聞いたにも関わらず、彼女は自分の携帯をいじり、俺に向けてカチカチとボタンを鳴らしている。
何だいその携帯を俺に向けるって動作の意味するものは。
不意にロンブーの古い番組でやっていた、
「ブラックメール送信、ズキューン(笑)」
を思い出したが、俺のアドレスも知らないのにメールを送るはずもないし、何をやってるのかが疑問で俺は少し慌てていた。


鉄火が怪訝な顔をして俺に話しかける
「ねえ、早く携帯出しなよ。ホラ赤外線」

彼女がアドレス交換をしたいのだということにようやく気付き、俺は慌てて携帯を取り出す。
だがメールすら実家の姉貴や母とやり取りした程度の実力の俺に、
赤外線通信などというスキミング詐欺のような名称のハイテクニックが披露できるはずもない。

「ああ、これな、こうやってな、ごめん忘れたw」

と、やり方を忘れたふりをして彼女に丁寧に教えてもらう。
彼女が俺の真横に立って、ボタンを押す順序を丁寧に教える。
彼女の細くグラマラスなボディラインが俺の目に嫌でも入ってくる。
まあそんなものに興味など俺はひとつも示さないけどな、ケッ。

彼女の親切な指導の成果もあり、俺は一つ学習した。
彼女はCカップとDカップの間だ。

       

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