Neetel Inside 文芸新都
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 鉄火とそれぞれのバイクで目的地に向かって発進したのは良いのだが、
彼女を信号待ちの度に待つ羽目になり、少々イライラしている俺が居た。

彼女は女性ながら、座高の高いオフロードバイクに乗っている辺り、非常にツウな子なのだなと思っていたのだが、意外なことに運転はそれほど上手くは無かったのだ。
背の高い女性には、確かにこの手のバイクと、アメリカンのバイクは非常に見栄えがする。特にオフロード車はその車間のすり抜け特性と小回りのアグレッシブさが持ち味で、俺もセカンドバイクにぜひ一台欲しいくらいだ。
だが彼女はオフロード車のすり抜け特性をフル活用することなく、信号待ちのたびに車の後ろに停車し、最前列に出ようとはしなかった。
そのことが俺の心に引っかかりはしたが、まあここは女性のする事、大目に見ることにしよう。

やがてバイパスを走り始めた俺のバイクに、異変が起きた。
タイヤがふらふらとよれてしまい、直進性がまるで安定しない。路側帯に乗り上げ、タイヤは更に滑り始めた。どうやらパンクのようだ。
バイクを道端に止め、後輪を見るとやはりパンクをしていた。全くツいてない話だ。

鉄火
「まぁたパンク?こないだパンクしたって言ってたけど、ちゃんと直ってないんじゃない?」

心の中で、過去にパンクしたと嘘をついたことを詫びながら苦笑いを浮かべて、俺は途方にくれた。

鉄火
「ま、まあ今日はさ、バイクここに置いてこうよ。私凹の家まで乗っけてってあげるからさw」

この二人乗りの前後関係が入れ替わっていれば、俺は背中にありえないほどの膨満感を感じ、
それをネタにお握りを数十回は出来たのであろうが・・・俺が彼女のバイクをすすんで運転する為のもっともらしい理由も見つからなかったので、とりあえず彼女の後ろに跨り、俺は自宅まで送ってもらうことになった。




自宅に着き、彼女が温かい飲み物を買いに行こうとするので、それを御し、


「ありがとな、俺がなんかあったかいもんでも入れますわ」

という台詞と共に彼女を自宅に招き入れることに成功した俺には、

「彼女の呼び出しに何か意味がある」

というニュータイプ的直感の事など、すっかりアンドロメダの彼方だったのである。

       

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