Neetel Inside 文芸新都
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翌日、俺は眼の下にクマを作りながら出社した。

昨日張り切って俺のスレをVIPに立てようと息巻いていたのは確かだ。
ただ、ワンダーランドと俺が称したニュー速VIPで
俺自身が万人を唸らせるだけの>>1になれなかっただけの話なのさ。

どうしてもおもしろい文章が浮かばず、しかもまだ俺と彼女の関係なんて、
ただの友達に過ぎない。それをどうやってVIPPERの皆様は楽しめると言うのか。
きっとつまらないに決まってるさ。だって俺ってつまんないもの。全てにおいて。

俺はそんなことを考えながらスレ立てウィンドウを黙って閉じていた。


だって、俺に何が出来るっていうのさ。孤男だぜ。つまんねえもの。
だるい体を引きずりながら俺は仕事に集中しようとした。
それが日々の心の空虚さを埋める一番の方法さ。
孤男の人々はこうして日々を当たり障りなく生きてるってことを皆も覚えておいてほしい。



眠たい眼をこすりながら午前の仕事をどうにか終え、
近くのコンビニで買った弁当を持ち、駐車場へ

俺は昼飯はいつも車で食う。とても自由な時間だ。
出勤中という拘束を伴う苦痛な時間の中で、唯一俺がフリーで居られる場所、それが俺の車の中
とはいってもこれは俺が姉貴から「借りッパチ」してる軽4であって、
厳密に言うと俺の車ではないわけだが、独りで「俺の」車で飯を食う。

うまい。誰の話を「聞いてるふり」する事もなく、相槌を打たされることもなく、
自分の時間を自分の為に使う。素晴らしい。気持ちいい。

弁当を食べ終わり、ゲフゥというため息と共にシートを倒そうとして、あることをふと思い出した。
昼休みのうちに出しておかないといけない郵便物があったのだ。
俺は舌打ちしながら事務所に戻っていった。

俺が郵便物を出してから会社に戻ると、鉄火が事務所に遊びに来ていた。
先日俺に「残業なん?」と聞いてきた、俺の向いの席に座っているくるくる巻き髪の女の子
通称「向井」と話しているようだ。

鉄火
「だからね、今日は居酒屋な気分だよw」
向井
「いや~お酒は私は今日はええわw」

っほほう、今晩はお二人でくんずほずれつのお食事会ですか。
などと俺は自分でくだらない事を心の中で言っておきながら、
その光景を妄想して勃起していた。
こういうところが俺らしいというか、なんというか
こんな自分が好きだからこそ、これまた孤男なんだな俺

とはいえなんだか俺が事務所に戻ってきてからというもの、
鉄火が俺に妙に話を振ってきて、俺は話に嫌でも入らなければならない状況に。

そして面倒臭いながらも受答えしていると、話が段々とステップうpしていくのを俺は感じていた。

鉄火
「~でさ、話変わるけどなんでいつも弁当持って行って車で一人で食べてんの?」


「だって一人で食べるの楽しいですよ 」

鉄火
「はははっ暗い、それは暗いw何の音楽とか聞いてんの?お姉さんに教えてみなよ」


「そうっすね、バンプとか」

鉄火
「一言返事の多い子だねwバンプって高校生とかが聞く歌じゃないの?」
「君若いねえ~w青春だね~w」


「ふるっ、青春って・・・」

鉄火
「だから短いってw一言返事やめてってw」
「君さあ・・・・会話のキャッチボールとかって苦手なの?一人っ子?」

なんという直球派・・・俺は言っておくけどデリケートなんだぜ、
そんな直球で話進められたら俺はキャッチボールなんて出来やしないさ。
いや元々下手投げで話しかけられたとしても話なんて出来ないけどさ。


そしてなんだかんだ言いながらも女性との話に夢中で相槌を打ったりしていたんだが、
窓ガラスの向こうからの俺を睨みつける鋭い視線を感じ、俺は心底ぞっとした。


TIGが事務所の中を、いや事務所の中にいる俺を睨んでいた。

       

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