Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      

 地獄の闇に包まれた鍋パーティは終焉を迎え、おのおのの帰途に着く。
向井は「お父さんたちが帰ってきてるから」という謎の言葉を残し、颯爽と帰っていく。何だそのスッキリとした顔は。
というか俺たちを二人にしないでくれ。鉄火が怖すぎる。
俺は思う。向井は最大の勇気を持ってとんでもない太さの釘を鉄火にブッ刺したのではないかと
貫きすぎて俺にまで刺さってるけど。

>>当事者のおまいさんがそう感じたなら
>>多分そうだろうね
>>だって当事者じゃない俺もそう思う。

つい先日キスをしたところなのに、もう怒られる。
彼女の顔を見る。困った顔をしている。

鉄火
「ま、こういうのが嫌だったんだよね、こういうの
 凹には分かんなかったかな、向井がどういうつもりで家に行ったのか
 なんでHやったの?」

>>やってねえええええw

>>やってねえw

>>うむ、してないな、Hは

そうだ、してねえっつの、ったく。俺は即座に言い返す。


「いや、してへん。俺童貞やしそんなんいきなりなし崩しに女の子抱くほど困ってないわ。」

ここでだけ言わせてくれ、本当は困ってる。
しょっちゅう握ってるからムラムラしなかっただけさ。

>>正直だな、まあよし

>>っていうかテンパってただろあん時www

鉄火
「25で経験ないのもそうだけど、それは当事者にしか分からないじゃんか!」

あれ、ナニをそんなにムキになるというのかお姐さま。
そもそも俺達二人では会えないんじゃなかったのか?
いや今彼女の家の前でこうしてるこれは成行上そうなってしまったわけですどな。


「いやホント、何もしてない。俺はだってBバージン。」

鉄火
「とにかく彼女の気持ちわかったでしょ?私とアンタが仲良くしてるのも含めて
 それをどうにかしたいって思って言った言葉なんだから、アンタもどうにかしなさいよ。
 彼女と付き合うの?付き合わないの?」

>>ぼ、凹・・・それはそのときの気持ちを正直に書いてるんだろうけど・・・
>>全然空気読めてなかったんだな・・。
>>しかし、鉄火の怒り具合からして希望はあるなこの段階では

な、なんでそうなる鉄火。
じゃあアンタはなんで俺のファーストキスを奪うような暴挙に出やがったんだ。
あんまり表面繕う様な建前正義な物言いばかりしていると、俺もいい加減頭にくるぞ。切れないけど。

>>だってその暴挙に出たのは向井が夜中に家に来たのを知る前だろうがwwwダメだw凹は本当の馬鹿ww

思い切って俺は鉄火の手を掴む。
さあ、男を見せるときだ凹、俺頑張れ


 俺
 「俺がいつまでもうにうにしてんのは鉄火の事が好きやからにキマットルやんか、このニブ女!!」
 鉄火
 「なによ!そっちこそ覚悟してきた女をいい加減な気持ちで抱くなんて最低!」
 俺
 「お前が、好きだ・・・」
 鉄火
 「そ、そのことばまってたの」
                  (妄想終)』

なんて妄想もしてたけど、所詮俺のテクなんて知れたもの、
出た床勝負の男の弱点ここに極まれり

>>妄想部分はいいから事実のみを正確に頼むwwww

よしきた住人様、では続きを
彼女の手を掴んだまま俺は突破口を開く


「向井とは付き合う気にはなれへん。今は無理」

鉄火
「なんで?あんなにいい子やのに!
アンタ前から言ってるけどどういううぬぼれでそういうこと言うわけ?」


「んー・・・」

本日の鍋のときの向井の発言の意図にヒいてしまった事を上手く表現できなかった俺は、ここで引き下がることにした。


「なんつうかね、今は帰るわ、二人では会わないんでしょ?」

鉄火
「ん・・・そうね。会えないね。じゃあ帰って」


「ん・・・」

鉄火が勢い良く俺の手を振り解いた所為で、俺は階段の手すりに手をぶつける。痛い。

鉄火
「じゃあまたね」


「鉄火、俺らって」

ごく自然に口をついて、つきあえるかな、と言えそうな気がした。
だが鉄火の言葉がそれをせき止める。

鉄火
「聞きたくない。帰って。」

>>ああ、なんてダメな対応・・・。
>>そこは向井がダメじゃなくて鉄火が好きといってればGJだったんだが・・・。
>>『二人では会わないんでしょ?』
>>これはだめだぁぁ。

無言で階段を上がる鉄火。
もはや呼び止めることも、追いかけることも出来なかった。
恋愛経験ゼロ、人間関係希薄な俺にはこれ以上どうすることも出来なかった。
黙って帰途に着き、帰宅後も、向井の言葉に俺たちが振り回されてるような気がして落ち着かず、メールで呼びかけたりはしたのだが返信は無かった。

>>それでも凹なら・・・凹ならきっと何とかしてくれる・・・・!!

>>結局鍋で向井暴走、鉄火が誤解だろ?
>>これならまだなんとかなるんじゃね?

>>それよりもお前の発言「もう二人で会わないんでしょ?」が
>>非常に嫌味でまずい件

>>向井と付き合えない理由はだた一つだろ
>>鉄火の事が好きだからでよかったんじゃね?

>>お前はストレートに言うってことを知らないのか?

>>ストレートにいえないのがDTクオリティ

>>墓穴掘るのも大概にしないと鉄火に本気で見捨てられるな。

>>向井ってそんなに悪い奴かな。俺にはそおうは思えんけど。

>>↑うん、俺もそう思った。だって鉄火は応援してくれてると思ってんだろ?
>>ただ凹に「私覚悟できてたのよ」って意思表示だと思ったよ。

その後、住人さまがたからの多くのありがたいお言葉を頂き、俺は自らの失策について知ることが出来た。
結局のところ、俺が正直に鉄火が好きだから向井とは付き合えない、とはっきり言わなかったのがそもそもの原因だったのだ。
俺は、心のどこかで、誰も傷つけずに、かつ自分は絶対条件として一回も傷つくことなく幸せになりたいと考えているのかもしれない。
ともかくこうなってしまったものは仕方が無い。
まずは仕切りなおしで鉄火の誤解を解くところから始めようか。

そう決心した翌日月曜日、鉄火と話す機会もなかったものの
住人さまがたのアドバイスが効いたのか、俺はひとまずは心の平静を取り戻した。

だが仕事を終え帰宅し、住人様がたとの会話に花を咲かせていた俺は
チカチカとメール着信を知らせる携帯に気がついてしまった。
夜更かしでショボつく目をこすりながら携帯に目をやる

向井メール
「あんまりお姉ちゃんと仲良くされると私は困るんだけどな?
 
 お姉ちゃんとは仲良くやりたいし
 
 お姉ちゃんと逢ってるでしょ?」

もう、nice boat endでいいかも

       

表紙
Tweet

Neetsha