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長眠病
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長眠病



11時。
11時に私は起きました。
けれど11時は11時でも夜の11時です。
別に私は夜型の生活を送っている訳でもないですし
昨日は夜の12時に寝ました。
つまり私は23時間睡眠していた事になります。
もちろんこれは異常です。
そして私は恐らく今日、死ぬでしょう。

自覚症状が出てきたのは2週間前でした。
私はいつも7時ぴったしに起きるのが習慣だったのですが
ある日8時に起きました。
でもその時は、「あぁ、1時間という時間を損した」と思っただけでした。
そしてその日の就寝前、目覚まし時計のアラームを念のためセットしておきました。

次の日、私は9時に起きました。
目覚ましのアラームは間違いなくONになっていました。
つまりずっと鳴っていたのに起きれなかったのです。
何だか私は気持ち悪くなりました。
でもまだこの時点では「たかが寝て起きる問題」と
大した目で見ていなかったので
心にひっかかるものはあるものの、さほど気にしませんでした。

次の日、私は10時に起きました。
さらに次の日、私は11時に起きました。
さらにさらに次の日、私は12時に起きました。
さすがに私は異常だと感じました。
同時に目に見えない恐怖、どうしようもできない恐怖が私を襲いました。
どうやら起きる時間が1日経つごとに1時間遅くずれるようです。

さらに3日経って私は新たな事に気づきました。
それは夜の12時ちょうどに強烈な睡魔が襲ってくることです。
私は普段11時50分ごろに布団に横になるのが習慣となっているので
すぐには気づきませんでしたが目覚まし時計を見つめながら横になるのを
続けることでその事を発見しました。

起きるのが昼間の4時になった頃
私は病院に行って医者に相談しました。
検査の結果はやはり「正常」です。
ある医者は心の病気かもしれないと言って
カウンセラーを紹介してくれました。
しかしカウンセラーの審査を受けても「いたって正常」で済まされました。

医者も何にも当てにならないなか
私はこの病気についてまとめてみました。名前もつけて。

長眠病-tyouminbyou-
①主に発病してから(原因不明)睡眠時間が増えていく
②夜12時になると急激な眠気が襲ってくる
③寝てから起きるまでの間どんなことをされても起きない


症状④には確証がないのでまだはっきりした事が書けません。
いや書きたくないだけかもしれません。
ただ私の予想が当たれば、恐らく私は死ぬ事になるでしょう。

そしてどうする事もできないまま今日になりました。
冒頭で書いた通り私が起きたのは夜の11時です。
次の症状まで残り3分。
私の人生最期の3分になると思います。
私はどうしていいか分かりません。
死を目の前にしても
未練も何にもありません。
ただ未練が無い事を寂しく感じているのかもしれません。
私は何も無くてカラッポな人間だったんだなと思います。
何にも無いから何かを残したくて
私は今この文を書いているのかもしれません。
ただ今なら生き

       

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