Neetel Inside ニートノベル
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なんかいろいろ短編とか
風鈴(みじかいぉ”!)

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なんでだろうか
自分でも良くわからないけれど
なんとなく来てしまった
自分でも良くわからないけれど
道に迷うわけでもなく
まるで家から学校への道のりのように
気づけばついてしまった
「・・・・・・・」
非常ドアをあければそこは太陽の真下
目が痛くなるほどに眩しかった
そのビルは工事途中で打ち切られたもので
屋上には柵などはなかったが
ただベンチが一つだけ置いてあった
古びた
白いベンチ
ただ女性が空を眺めていた
人間の作り出した無機質なビルと自然が長い時間を経て調和し
その中にまた一人の人間が自然のように存在した
日々を生きているとたまに意味もなく感じるノスタルジーな感覚
別に昔経験したとか そういうわけではなく
どことなく 胸が きゅきゅ と引き締まるような
そんな感覚

僕は黙って彼女の隣に座った
そして彼女と一緒に空をながめ続けた
夏の日は空が高く太陽がまぶしい
車の音はもはや聞こえないほど町からは外れていて
聞こえるのは風鈴の音だけだった
その音はどこから来てるのかはわからないが
確かに数分に1・2回くらいなっていた

何時間たっただろうか
二人の間に会話は無かったが
不思議と気まずい空気にはならなかった
というよりも
まるでお互いが見えていないかのような
そんな空気だった
それでもそのベンチは二人がやっと座れる広さで
たまに肩がふれることもあった

「風鈴は、好きですか?」
そう彼女は聞き
僕は首を振り
「いいえ」
そう言ったのを彼女は確かに聞いた



******



町はずれの工事中のビル
正確に言うともう工事はしてない
1ヶ月ほど前にそこの工事は打ち切りになったのだ
最初は秘密基地を歩き回るような
そんな気持ちだった
でも気づけばその人のいないビルで
光と闇が交差しているその場所を意味もなく歩くことが好きになった。

ある日屋上への梯子がある事に気づいた
その梯子はまるで隠されているかのようだった
「・・・・・・・」
非常ドアをあければそこには真っ青な空が目前に広がった
ベンチが置いてあった
綺麗な
白いベンチ
僕が非常ドアを開けたとき
そのベンチに座っていた少女はこっちを見た
そして笑顔で僕を歓迎してくれた
僕は彼女に
「いつからここに来るようになったの?」
そう聞くと彼女はこのビルが出来たときからだと
そう答えた

その日から僕だけの秘密基地は二人の秘密基地に変わった

それから毎日いろんなことを話したが
彼女はまるでこのビルの外のことは何も知らないようだった
家に帰るときはいつも僕のほうが先で
彼女が帰るのを見たことはなかった
僕は彼女にどうしてかと聞いたら
帰る場所はここなのだと
そう答えた

ある日僕は彼女に風鈴をプレゼントした
彼女は本当にそれを気に入ってくれた
暇さえあればそれを振って音をならしていた
そして笑うのだった


一ヶ月くらい経っただろうか

いつものように非常ドアを開けると彼女はベンチで泣いていた
僕は彼女に
「どうしたの?」
と聞くと
「ずっと真っ暗なの・・・」
彼女はそう答え
泣き続けた
僕は彼女を抱いて
「僕はここにいるよ」
そう叫び続けた
その声はだんだん小さくなり
いづれ彼の喉は音を出さなくなった。
それでも僕は彼女を抱き続けた
しばらくすると彼女は泣き疲れたのか眠り始めた。


僕は彼女が暗闇の中でも僕の場所がわかるようにいつでも風鈴を持ってあるく事にした
彼女は風鈴の音が聞こえると
いつもそっちのほうへ笑顔で走っていった。
僕はもう彼女の名前を呼べなかったし
彼女はもう僕の顔を見れなかったが
ずっと一緒に空を眺めていた


風が吹いた
とても強い風だった
それは僕の手から風鈴を奪い取り
風鈴はビルの外に飛んでいった
彼女はそれを笑顔で追いかけた
僕は声が出なかった。




その日からビルはどこからともなく風鈴の音を鳴らしはじめた。

******

僕は彼女に聞いた
「それでは・・・あなたは風鈴がすきですか?」

彼女はほほを染めて照れくさそうに答えた

「大好きです」

僕は泣いた

「それなら、僕も大好きです。」

それを聞くと、彼女はあの笑顔を僕に見せた


僕は泣きながら空を見上げた

気づけば彼女が座っていたところには風鈴がおいてあった

それを抱きしめ。

僕は空を見上げた


その日からはもうビルから風鈴の音がする事はなかった。

       

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