Neetel Inside 文芸新都
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 熟睡した。酔いも八割方醒めたようだ。この1Kの賃貸は東向きである。曙の様は摺りガラスで見えないが、とにかく朝日で目が眩む。かつてのロムスカも心配のし過ぎではないかという戯れ言を訊き、周囲が見えなくなったのであろうか。

 朝食は、やはり一膳一汁一菜である。地域環境と共に育まれた料理は、科学的にも健康によいと裏付けが取れているのであろう。何しろ作りやすい。穀類は原料に水を入れて熱するだけ。スープは素と具と水を入れて熱するだけ。野菜は塩の味付けにして数日放置するだけ。もしあなたに欧米の友人がいるのなら、彼ら彼女らが今まで生地を捏ねてそれぞれ何枚パンを焼いたかを胸に手を当てて考えてみるべきである。

 昼はイタリアンでランチでは無い。公園でコンビニおにぎりである。デザートはヨーグルト。ヨーグルトはブルガリア。残念なことにいいえ、ケフィアとは言いようが無い。大量のドバトがウザい。お人好しもといお鳥好しの住民が与えるパンの耳により、体内は50%のモッツァレラチーズと28%のトマトソース、11%のオリーブオイルと7%のアンチョビ、そして4%のバジルでできていると見受けられる。正直こうはなりたく無い。それでもなお、今にも米粒と野菜生活を求めて寄って集って来そうである。羊水が腐る年齢のあたりから、女はドバトと野良犬という二種類のジャンルに分かれるらしい。これはあるある大辞典で得た豆知識である。

 三時はのど飴。加湿器など無く、乾燥したオフィスではこれ以外選択肢が無いと自負している。同僚はお徳用パックからキットカットを出したり、白い恋人のようなプチを食べたりしている。衝動買いしたマイクロダイエットパウダーが大量に余って、後悔しながら経口処理する者もいる。飴はビタミンC入り。天童よしみの例のあれではない。安い類似品だ。正直この時を逃すと、一体全体どこで肌を何とか維持するだけのビタミンやミネラルを摂取しているのか謎である。

 夜は取り立てて言うべきことは何もない。敢えて言うなら残りである。巷では日本ハムのシャウエッセンが夕食の定番であるらしいが、私にとっては全くの都市伝説である。動物性タンパクを摂る機会は殆ど無い。牛乳も嫌いである。確かに栄養は偏っているだろうが、特に今のところは問題無い。肉を買ったら負けかなと思ってる。そもそも無駄に油を喉という皮膚に塗り込めたくない。前科持ちになってリストラされ、縁起が悪そうである。私は草野球チームにすら入っていないので。

 部屋にある低い棚の上には、達磨を二個置いている。唯一の調度品。糊原と北関東の中山道宿場町へ行ったときのお土産である。確か東国の大名がなんたらかんたらという薀蓄を聞いた。レンドルミンを一錠飲むと、達磨が私を見つめて何かを訴えているような気がする。しかし頭がよく回らないので、私はゆっくり布団を敷いて、床へ就くことにしている。

 以上が、私の一般的な日常である。

   [レジ袋がいるスーパーのチラシの裏より]



       

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Neetsha