Neetel Inside 文芸新都
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ショートショート集
裁き

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ある夜男は一人バーで飲んでいた。つらいことが
あったのだ。突然声が聞こえた。
「お前たちよ。私は神だ。これから裁きを始める」
「なんだこの声は。飲みすぎてしまったかな」
男がそう言うとバーテンダーが驚いて男に聞いてきた。
「あなたにも今の声が聞こえたのですか」
「ああそうだ」
これは驚いた。周りの連中にも聞いてみると
皆聞こえるといった。
これは大変な
ことになりそうだ。しばらくするとまた声が
聞こえてきた。
「これを幻聴だとか思う奴は周りの人間に
聞けばよかろう。それでも信じぬ奴は
かまわん。結果は降りかかるがな。裁きによって悪と
みなされたものは全ての結果がついた後になくなる。
全てなくなる。これからお前たちの心の中で悪か
どうか判断してくれ。多数決で判断される。まずは酒だ」
バーテンダーが客に叫んだ。
「酒がなくなったら困る。仕事ができなくなる。
皆さんも酒は好きでしょう」
その通りだ。俺は善と強く思った。しかし世の中には
酒嫌いの連中もいるからなどうなるか…。そんな感じで
様々なもの善悪の判断がなされていった。最後に
神はこういった。
「最後は人類だ。人類が善か悪か判断してくれ。
この判断が終わった後結果を反映させる」
俺は心の中で善と強く思った。その一方でまあ大丈夫
だろうという気持ちもあった。人類と悪と
判断する連中は自殺志願者などのごく小数だろう。
しかし神によって結果が反映された途端人類は
地球上から消滅した。なぜだろうか。
人類はとんでもない勘違いをしていたのだ。
投票権は人類だけのものではなかったのだ。
それこそサルからプランクトン、つまりは地球上
の全生命に与えられていたのだ。

       

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