Neetel Inside 文芸新都
表紙

ショートショート集
ボタン

見開き   最大化      

ある天文台がUFOが接近しているという報告をした。
人々は最初は何かの間違いかと思った。しかし、
他の天文台が観測した結果UFOは確かに
地球に接近していた。あと1週間ほどで地球に
到着するという。人々はあわてだした。
宇宙人は何のためにやってきたか、
全く分からないのだ。交易が目的ならいいが
侵略が目的となると大変だ。しかしながら
どうやれば助かるのか誰にも分からない。
これは神が裁きを下しに来たのだ。
などという宗教家もいた。金持ちや政治家は
宇宙船で逃げようとした。しかし民衆が
それを阻止した。自分たちだけ生き残ろうと
するのを許せるわけがなかった。また様々な機関が
ストップした。いくら金を稼いでもあと1週間で
死んだら意味がない。様々な混乱の中で1週間は
あっという間に終わった。しかし情熱ある
学者たちのおかげで大体の着陸地点は割り出せた。
広大な平原地帯だ。そこには国際機関
の人間と科学者たちが行くことになった。
またジャーナリストたちも押しかけ
それを生放送しようとした。

宇宙船はゆっくりと着陸した。中から
宇宙人たちが出てきた。色が黄色くて
大きさは50cmぐらいあって足が4つ
ある点以外はあまり人間と変わらないよう
だった。宇宙人は何かを宇宙船から出した。
その瞬間人間たちは死を覚悟した。それが
連中の武器でそれを使って我々を攻撃するの
ではないかと思ったからだ。しかし実際そうは
ならなかった。宇宙人たちはそれを置いて
帰っていった。人間たちはしばらく呆然とした。
こんな展開になるとは誰も思って
いなかったのだ。しかし気を取り直して
望遠鏡で宇宙人が置いていった物を
見てみることにした。それはボタンだった。
地球のものとなんらかわりがない押しボタン。
ボタンの部分は赤く塗られている。周りは
1辺が30cmぐらいのガラスのようなもので
囲まれているようだった。とりあえず
近づいても害はなさそうだった。科学者
たちがそれを調べ始めた。いったい
どんな物質でできているのか。しかし
ながら全く分からなかった。囲って
いるものを壊して中のボタンを押せば
いいんじゃないかと言い出す奴もいたが、
なにが起こるのか全くわからないのだ。
押した途端地球が粉々になるほどの爆発を
するかもしれないのだ。そんな危険なこと
できるわけないではないか。

数ヶ月経ったが人類はまだ解決策を
見出せていなかった。そんな中ある
大国の政治家の発言が注目された。
その政治家はマスコミにあのボタンは
他の星においていけばいいのではないか
といった。そしてロボットにボタンを
押させるのだ。なぜそれを今まで
考えなかったのか。その発言には
多くの賛同がついて、実行されること
になった。地球からある程度はなれた
星でそれは行われることになった。
しかしロボットはボタンを押せなかった。
というか近づけさえできないのだ。
ボタンに30cmほどの距離まで近づくと
それ以上近寄れなくなったのだ。
宇宙飛行士は近寄れた。どうやら生物
ではないと押せないようになっている
らしい。そのニュースを知って
地球人たちは落胆した。しかしその翌日
驚くべきニュースが入った。ある宇宙
探検隊が生命のある星を発見した
というのだ。それも文明のある星だ。
文明のレベルはだいたい産業革命ぐらいか。
誰かがそこにボタンをおいてくれば
いいんじゃないかといった。その意見には
批判も起きた。もしそれでその連中がボタンを
押して、その星が消滅したら我々の責任だと。
しかし我々は被害者であるという反論もあった。
もっともである。議論が続いたが結局
置いてくることになった。口ではなんだ
かんだ言ってもやはり得体の知れないものが
あるのは嫌なのである。様子を見るために
ガラスに超小型の監視カメラを取り付けることに
なった。

そして人類の宇宙船は無事その星に着陸し、
ボタンを置くことに成功した。その様子を人類が
仕掛けたカメラよりもっと小さいカメラで
見ていたものたちがいた。そのものたちとは
地球にボタンをおいていったものたち、
つまりはティーラ星人たちだった。ティーラ
星人は落胆した表情でつぶやいた。
「やれやれ皆同じようなことを考えるもんですね」





       

表紙
Tweet

Neetsha