Neetel Inside 文芸新都
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ショートショート集
情報管理庁

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その男は情報管理庁に勤めていた。情報管理庁は内務省の傘下にある。
庁の仕事は国民の情報を集め、管理すること。その情報は、
犯罪事件のときなどに使われる。情報集めは主に監視カメラからだ。
街中はもちろん個人の住宅にも仕掛けられている。どこに
仕掛けたかはもちろん住民には知らせない。もし勝手に監視カメラを
取り外した場合には処罰が下る。データベースは一人一人ある。顔認証に
よって人が映っている映像は自動的にその人のデータベースに
送られる。情報はその他いろいろな形によって集められた。
男がやっている仕事は情報データベースを使いやすい形に
することだった。男が情報管理庁に入ったのは高給という
こともあったが、何よりデータベースが消されるということだった。
重大な犯罪をした覚えはないが自分の情報が集められている
というのは愉快なことではない。

男はその日も定刻どおり出勤した。すると男の部署の部長が
「おい君。急に出張することになった。なのでこれらの荷物を
私の部屋から取ってきてくれないか。鍵はこれだ。10分ほどで
戻ってきてくれ。」
と声を掛け荷物のリストを書いたメモを渡した。
男は
「はい分かりました」
と答えながら部長室に向かった。部長室に入ると早速
メモに書いてあるものを集めた。数分ほどで全て集まった。
一段落した男に部長のパソコンが目に入った。まだ時間はある。
男は興味本位でパソコンの電源を入れた。すると
「パスワードを入力してください」
というメッセージが出てきた。
男は部長に関連する数字を打ち込んでみた。すると30秒ほどで
パスワードは解けた。パソコンを漁っていると極秘ファイル
という名のファイルが目に入った。いかにも怪しそうだったので
そのファイルを開いた。目に飛び込んできたのはたくさんの人間の
名前だった。そしてそれは同僚たちの名だった。ファイルを
隅々まで調べるとそこに男の名があった。恐る恐るそのファイルを
開いてみるとそこには男の経歴が事細かに書かれていた。
男はそれが自分のデータベースであるということと、自分が
だまされていたということを知った。そしてこう思った。
「なんということだ。いやしかし多分部長のデータベースも
部長の上の上司が持っているんだろうな。そしてその上の上司の
データベースは大臣が…。大臣のデータベースは首相が…。
ということはデーターベースがないのは首相だけというわけか。
いやきっと首相のデータベースも誰かが…」

       

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