Neetel Inside 文芸新都
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ショートショート集
記録

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あるところにUFOが降り立った。とはいっても空から降下してくるところを見たものは
いなかった。地上にいきなり現れたのだ。そして中から人類とそっくりの異星人たちが
出てきて呼びかけた。
『私たちは宇宙のかなたからやってきました。会話ができるのは我々が翻訳機を
使っているからです。驚かせない様にとあなた方とそっくりの形にしてきました。
また私たちの宇宙船は光学迷彩によって飛行中は見えないようになっています。
あなた方の代表者を出してください。』
これを聞いた地球人たちは驚いた。そして思った。どうやら科学のレベルが段違い
らしい。素直にいうことを聞いたほうがよさそうだと。すったもんだの挙句超大国の
元首とそのスタッフが交渉に当たることになった。元首は恐る恐る聞いてみる。
今まで他の国に威張ってきたので、こんな低姿勢は初めてだ。
『あの地球に何をしに来たのですか。』
『貿易交渉をしにきました。』
『そうなんですか。じゃあ侵略の意図は全くないんですね。』
『ええその通りです。あなた方が原料をくれる代わりに我々が技術を教えるこういう形
なわけです。』
『なるほど。しかし地球には上げられる資源などそれほど…。』
『いえいえいえ。このカタログを見てください。あなた方の星で余っているものは
ありませんか。』
元首がカタログを見てみるとなるほど地球にそこそこあるものもあった。それに何より
水の買い取り価格が高いようだった。
『水で取引したらどのくらいになりますかね。そうですねあなたの星の水の0,1%
ほどですかね。』
『全部綺麗な水でですか。』
『はいそうです。』
『ではダメです。今世界中に水不足の国がたくさんあるのです。』
『勘違いしないでください。我々には汚水を綺麗にする技術などとっくの昔から
あります。我々はUFOで海から水を吸い取り、それをきれいにしてそれがたまったら支払い
完了というわけです』
『分かりました。検討してみます。』
『いいですよ。しかし期限は一日だけですよ。』
いろいろな国の指導者が集まり会議を開いた。意見はほとんど一致した。取引をする
ということが決定された。0,1%の水など最先端技術とは比べ物にならないという意見が
多かった。また変にたてつくとけちをつけられて侵略されるのではないかという意見もあった。
そして水の吸い上げが始まった。それは壮観なものだった。大気圏外の宇宙船へ水が
どんどん吸い寄せられていく。おそらく水はどこか別の場所にワープさせられているのだろう。
また海面低下で大きな被害が出るということもなかった。異星人たちが上手くやっている
おかげだろう。最後に宇宙人たちは
『さようなら地球人たち。交換条件の技術供与は6ヶ月後から10年間です。』
というメッセージを送ってきた。異星人が言うには星に帰るのに2ヶ月、準備のために2ヶ月、
そしてまたくるために2ヶ月時間がかかるというのだ。それから地球はお祭り騒ぎだった。
異星人様たちをお迎えするために地球最高のもてなしをせよと。あっという間に月日が
流れていった。そして6ヶ月がすぎた。しかし異星人たちはやってこなかった。
まあ1週間やそこらの遅れはあるだろうと皆が言った。さらに1ヶ月がすぎた。
この変からおかしいやってこないいんじゃないか。と言い出すものが増えてきた。
さらに一ヶ月がたった。来るという者と来ないというものが半々ぐらいになってきた。
来ないというものたちから元首は突き上げられた。そして当選で選ばれた一般人からの
公開質問を受けることになった。元首はのらりくらりと質問をかわし続けていた。
そんなときに朗報が入った。天文台からでUFOが発見されたというのだ。すぐさま交信し、
着陸地点を指定した。大勢の人がそこで集まった。また様々な媒体で、生放送された。
そこから出てきた異星人を見た地球人たちは正直驚いた。なぜなら前の異星人たちとは違った
顔をしていたからだ。また皆同じ服を着ていた。制服だろうか。元首が異星人を迎えようと
するとすぐさま向こうのほうから来た。そして一人だけ制服の違うリーダーらしい異星人が
元首にしゃべり始めた。
『遅れてすいません。もう手遅れです。』
『ハハ。なにを言ってるんです。2ヶ月ぐらいの遅れで。早く技術供与をしてくださいよ。』
『あなた達はだまされていたんですよ。私達は宇宙連邦警察です。』
『え。』
『あいつらは独裁者が統治する星の詐欺師だったんです。様々な大掛かりな詐欺事件を
起こしていますが、このような手法は初めてです。連中の仲間の一人が自白して、
フルスピードでここまで来たんですが…。』
それを聞くと元首は歯軋りをした。
『しかしあなた方の星は2つも記録を作りましたよ。』
『どんな記録ですか。』
『一つは詐欺の最大被害金額です。もう一つは連邦に参加するときの文明の低さです。
あなた方の星は発展途上星で管理下にありましたがいたしたかありません。通常連邦
に参加するにはもっと高い文明を築いていただかなければいけないのですが、これは特例です。
いくらなんでも住民全員の記憶や様々な記録を全部抹消するには手間が掛かりすぎます。
千近くある連邦の惑星のなかで知名度のある惑星になると思いますよ。』
なにを言っている。そんな記録ないほうがいいし、悪いイメージがあるより、何も知らないほうがいいに決まっている。

       

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